「死しの秘宝ひほう」
ハリーは言った。その言葉でダンブルドアの顔からすっかり笑いが消えたのを見て、ハリーの腹も収まった。
「ああ、そうじゃな」ダンブルドアは、逆に心配そうな顔になった。
「どうなんですか」
ダンブルドアと知り合って以来初めて、ハリーは、老ろう成せいしたダンブルドアではない顔を見た。刹那せつなではあったが、老人どころか、悪いた戯ずらの最中に見つかった小さな子どものような表情を見せたのだ。
「許してくれるかのう」ダンブルドアが言った。「きみを信用しなかったこと、きみに教えなかったことを、許してくれるじゃろうか ハリー、わしは、きみがわしと同じ失敗を繰り返すのではないかと恐れただけなのじゃ。わしと同じ過あやまちを犯すのではないかと、それだけを恐れたのじゃ。ハリー、どうか許しておくれ。もうだいぶ前から、きみがわしよりずっとまっすぐな人間だとわかっておったのじゃが」
「何をおっしゃっているのですか」
ダンブルドアの声の調子や、急にダンブルドアの目に光った涙に驚いて、ハリーが聞いた。
「秘宝ひほう、秘宝」ダンブルドアがつぶやいた。「死に物狂いの、人間の夢じゃ」
「でも、秘宝は実在します」
「実在する。しかも危険な物じゃ。愚者ぐしゃたちへの誘いざないなのじゃ」ダンブルドアが言った。「そしてこのわしも、その愚おろか者であった。しかし、きみはわかっておろう もはやわしには、きみに秘すべきことは何もない。きみは知っておるのじゃ」
「何をですか」
ダンブルドアは、ハリーに真正面から向き合った。輝くようなブルーの目に、涙がまだ光っていた。
「死を制する者。ハリーよ、死を克こく服ふくする者じゃ わしは、結局のところ、ヴォルデモートよりましな人間であったと言えようか」
「もちろんそうです」ハリーが言った。「もちろんですとも――そんなこと、聞くまでもないでしょう 先生は、意味もなく人を殺したりしませんでした」
「そうじゃ、そうじゃな」
ダンブルドアはまるで、小さな子どもが励ましを求めているように見えた。
「しかし、ハリー、わしもまた、死を克服する方法を求めたのじゃよ」
「あいつと同じやり方じゃありません」ハリーが言った。
ダンブルドアにあれほどさまざまな怒りを感じていたハリーが、この高い丸天井の下に座り、自己否定するダンブルドアを弁護べんごしようとしているとは、なんと奇妙きみょうなことか。
「先生は、秘宝を求めた。分ぶん霊れい箱ばこをじゃない」
「秘宝を」ダンブルドアがつぶやいた。「分霊箱をではない。そのとおりじゃ」
しばらく沈ちん黙もくが流れた。背後の生き物が訴うったえるように泣いても、ハリーはもう振り返らなかった。
“死亡圣器。”说完,他很高兴地看到邓布利多脸上的笑 容消失了。