ダンブルドアは、ハリーに微笑ほほえみかけた。
「僕」
「きみじゃ。ご両親が亡くなられた夜、『マント』がなぜわしの手元にあったか、きみはすでに推量すいりょうしておることじゃろう。ジェームズが、死の数日前に、わしにマントを見せてくれた。学生時代、ジェームズの悪いた戯ずらがなぜ見つからずにすんだのか、それで大おお方かたの説明がついた わしは、自分の目にしたものが信じられなかった。借り受けて調べてみたい、とジェームズに頼んだ。そのときには、秘宝を集めるという夢はとうにあきらめておったのじゃが、それでもマントをよく見てみたいという想いに抗こうしきれなかった……それは、わしがそれまで見たこともない『マント』じゃった。非常に古く、すべてにおいて完かん璧ぺきで……ところがそのあと、きみの父君が亡くなり、わしはついに、二つの秘宝を我がものにした」
ダンブルドアは、痛々しいほど苦い口調で言った。
「でも、『マント』は、僕の両親が死を逃れるための役には、立たなかったと思います」
ハリーは急いで言った。
「ヴォルデモートは、父と母がどこにいるかを知っていました。『マント』があっても、二人に呪のろいが効かないようにすることはできなかったでしょう」
「そうじゃ」ダンブルドアはため息をついた。「そうじゃな」
ハリーはあとの言葉を待ったが、ダンブルドアが何も言わないので、ハリーは先を促うながした。
「それで先生は、『マント』を見たときにはもう秘宝ひほうを探すのをあきらめていたのですね」
「ああ、そうじゃ」
ダンブルドアは微かすかな声で言った。力を振りしぼってハリーと目を合わせているように見えた。
「きみは、何が起こったかを知っておる。知っておるのじゃ。きみよりわし自身が、どんなに自分を軽けい蔑べつしておるか」
「でも僕、先生を軽蔑したりなんか――」
「それなら、軽蔑すべきじゃ」
ダンブルドアが言った。そして深々と息を吸い込んだ。
「わしの妹の病弱さの秘密を、きみは知っておる。マグルたちのしたことも、その結果、妹がどうなったかも。哀あわれむべきわしの父が復讐ふくしゅうを求め、その代償だいしょうにアズカバンで死んだことも知っておろう。わしの母が、アリアナの世話をするために、自分自身の人生を捨てておったこともな」
「わしはのう、ハリー、憤ふん慨がいしたのじゃ」
ダンブルドアはあからさまに、冷たく言い放った。ダンブルドアは、いま、ハリーの頭越しに、遠くのほうを見ていた。