「わしには才能があった。優秀じゃった。わしは逃げ出したかった。輝きたかった。栄光がほしかった」
「誤解しないでほしい」
ダンブルドアの顔に苦痛が過よぎり、そのためにその表情は再び年老いて見えた。
「わしは、家族を愛しておった。両親を愛し、弟も妹も愛していた。しかし、わしは自分本位だったのじゃよ、ハリー。際立って無欲なきみなどには想像もつかぬほど、利り己こ的てきだったのじゃ」
「母の死後、傷きずついた妹と、つむじ曲がりの弟に対する責任を負わされてしまったわしは、怒りと苦い気持を抱いて村に戻った。籠かごの鳥だ、才能の浪費ろうひだ、わしはそう思った そのとき、ちょうどあの男がやってきた……」
ダンブルドアは、再びハリーの目をまっすぐに見た。
「グリンデルバルドじゃ。あの者の考えがどんなにわしを惹ひきつけたか、どんなに興奮させたか、ハリー、きみには想像できまい。マグルを力で従属じゅうぞくさせる。われら魔法族が勝利する。グリンデルバルドとわしは、革かく命めいの栄光ある若き指導者となる」
「いや、いくつか疑念ぎねんを抱きはした。良心の呵責かしゃくを、わしは虚むなしい言葉で鎮しずめた。すべては、より大きな善ぜんのためなのだからと。多少の害を与えても、魔法族にとって、その百倍もの見返りがあるのだからと。心の奥の奥で、わしはゲラート・グリンデルバルドの本質を知っていただろうか 知っていたと思う。しかし目をつむったのじゃ。わしらが立てていた計画が実を結べば、わしの夢はすべて叶かなうのじゃからと」
「そして、わしらの企ての中心に、『死しの秘宝ひほう』があった グリンデルバルドが、どれほどそれに魅了みりょうされていたか わしらが二人とも、どれほど魅み入いられていたか 『不敗ふはいの杖つえ』、わしらを権力へと導く武器『蘇よみがえりの石いし』――わしは知らぬふりをしておったが、グリンデルバルドにとってそれは、『亡もう者じゃ』の軍隊を意味した わしにとっては、白状するが、両親が戻ることを、そしてわしの肩の荷がすべて下ろされることを意味しておったのじゃ」