「そして『マント』……なぜかわしら二人の間では、ハリー、『マント』のことは、さして大きな話題になることはなかった。二人とも、『マント』なしで十分姿を隠すことができたからのう。『マント』の持つ真の魔力は、もちろん所有者だけでなくほかの者をも隠し、守るために使えるという点にあった。わしは、もしそれを見つけたら、アリアナを隠すのに役に立つじゃろうと考えた。しかし、わしら二人が『マント』に関心を持ったのは、主に、それで三つの品が完全にそろうからじゃった。伝説によれば、三つの品すべてを集めた者は真まことの死の征せい服ふく者しゃになると言われており、それは無敵むてきになることだと、わしらはそう解釈かいしゃくした」
「死の克こく服ふく者しゃ、無敵のグリンデルバルドとダンブルドア 二か月の愚おろかしくも残ざん酷こくな夢、そのためにわしは、残されたたった二人の家族を、ないがしろにしたのじゃ」
「そして……何が起こったか知っておろう。現実が戻ってきたのじゃ。粗そ野やで無学で、しかもわしなどよりずっとあっぱれな弟が、それを教えてくれた。わしを怒ど鳴なりつける弟の真実の声を、わしは聞きとうなかった。か弱く不安定な妹を抱えて、秘宝を求める旅に出ることはできないなどと、聞かされとうはなかった」
「議論が争いになった。グリンデルバルドは抑よく制せいを失った。気づかぬふりをしてはおったが、グリンデルバルドにはそのような面があると常々わしが感じておったものが、恐ろしい形で飛び出した。そしてアリアナは……母があれほど手をかけ、心にかけていたものを……床に倒れて死んでいた」
ダンブルドアは小さくあえぎ、声を上げて泣きはじめた。ハリーは手を伸ばした。そして、ダンブルドアに触ふれることができるとわかってうれしくなった。ハリーは、ダンブルドアの片腕をしっかりと握りしめた。するとダンブルドアは、徐々に自分を取り戻した。
「さて、わし以外の誰もが予測できたことだったのじゃが、グリンデルバルドは逃亡とうぼうした。あの者は、権力を掌握しょうあくする計画とマグルを苦しめる企てと、『死の秘宝』の夢を持って姿を消した。わしが励まし、手助けした夢じゃ。グリンデルバルドは逃げ、残ったわしは、妹を葬ほうむり、一生の負い目と恐ろしい後悔という身から出た錆さびの代償だいしょうを払いながら生きてきた」
「何年かが経たった。グリンデルバルドの噂うわさが聞こえてきた。計はかり知しれぬ力を持つ杖を、手に入れたという話じゃった。わしのほうは、その間、魔法大臣に就任しゅうにんするよう、一度ならず請こわれた。当然わしは断った。権力を持つわし自身は信用できぬ、ということをとうに学び取っていたからじゃ」