また沈ちん黙もくが訪れた。誰の呪いでアリアナが死んだのかを、ダンブルドアが知ったのかどうか、ハリーは聞かなかった。知りたくなかったし、それよりもダンブルドアに話させるのがいやだった。ようやくハリーは、「みぞの鏡」でダンブルドアが何を見たかを知った。そして、鏡の虜とりこになったハリーに、ダンブルドアがなぜあれほど理解を示してくれたのかがわかった。
二人は、長い間黙だまったままだった。背後の泣き声は、ハリーにはもうほとんど気にならなかった。
しばらくしてハリーが言った。
「グリンデルバルドは、ヴォルデモートが杖つえを追うのを阻そ止ししようとしました。グリンデルバルドは、嘘うそをついたのです。つまり、あの杖を持ったことはないというふりをしました」
ダンブルドアは、膝ひざに目を落としてうなずいた。曲がった鼻に、涙がまだ光っていた。
「風の便りに、孤独こどくなヌルメンガードの独どく房ぼうであの者が後年、悔悟かいごの念を示していたと聞いた。そうであってほしいと思う。自分がしたことを恥じ、恐ろしく思ったと考えたい。ヴォルデモートに嘘をついたのは、償つぐないをしようとしたからであろう……ヴォルデモートが秘宝ひほうを手に入れるのを、阻止しようとしたのであろう……」
「……それとも、先生の墓を暴あばくのを阻止しようとしたのでは」
ハリーが思ったままを言うと、ダンブルドアは目を拭ぬぐった。
またしばらくの沈ちん黙もくの後、ハリーが口を開いた。
「先生は、『蘇よみがえりの石いし』を使おうとなさいましたね」
ダンブルドアはうなずいた。
「何年もかかって、ようやくゴーントの廃はい屋おくに埋められているその石を見つけた。石は秘宝の中でもわしがいちばん強く求めていたものじゃった――もっとも若いときは、まったく違う理由で石がほしかったのじゃが。石を見て、わしは正気を失ったのじゃよ、ハリー。すでにそれが『分ぶん霊れい箱ばこ』になっていることも、指輪には間違いなく呪のろいがかかっていることも、すっかり忘れてしもうた。指輪を取り上げ、それをはめた。一瞬いっしゅんわしは、アリアナや母、そして父に会えると思った。そしてみんなに、わしがどんなにすまなく思っているかを伝えられると思ったのじゃ……」