「誰も手を出さないでくれ」
ハリーが大声で言った。水を打ったような静けさの中で、その声はトランペットのように鳴り響ひびいた。
「こうでなければならない。僕でなければならないんだ」
ヴォルデモートは、シューシューと息を吐はきながら言った。
「ポッターは本気ではない」
ヴォルデモートは赤い眼めを見開いた。
「ポッターのやり方はそうではあるまい 今日は誰を盾にするつもりだ、ポッター」
「誰でもない」ハリーは一言で答えた。
「分ぶん霊れい箱ばこはもうない。残っているのはおまえと僕だけだ。一方が生きるかぎり、他方は生きられぬ。二人のうちどちらかが、永遠に去ることになる……」
「どちらかがだと」
ヴォルデモートが嘲あざけった。全身を緊張きんちょうさせ、真っ赤な両眼を見開き、いまにも襲おそいかかろうとする蛇へびのようだ。
「勝つのは自分だと考えているのだろうな そうだろう 偶然生き残った男の子。ダンブルドアに操あやつられて生き残った男の子」
「偶然 母が僕を救うために死んだときのことが、偶然だと言うのか」
ハリーが問い返した。二人は互いに等距離を保ち、完全な円を描いて横へ横へと回り込んでいた。ハリーには、ヴォルデモートの顔しか見えなかった。
「偶然か 僕があの墓場で戦おうと決意したときのことが 今夜、身を守ろうともしなかった僕がまだこうして生きていて、再び戦うために戻ったことが偶然だと言うのか」
「偶然だ」
ヴォルデモートが甲かん高だかく叫さけんだ。しかし、まだ攻こう撃げきしてこなかった。見守る群衆は、石のように動かない。何百人もいる大おお広ひろ間まの中で、二人以外は誰も息をしていないかのようだった。
「偶然だ。たまたまにすぎぬ。おまえは、自分より偉大な者たちの陰に、めそめそとうずくまっていたというのが事実だ。そして俺おれ様さまに、おまえの身代わりにそいつらを殺させたのだ」
「今夜のおまえは、ほかの誰も殺せない」
ぐるぐる回り込みながら互いの目を見み据すえ、緑の目が赤い眼めを見つめてハリーが言った。
「おまえはもう決して、誰も殺すことはできない。わからないのか 僕は、おまえがこの人々を傷きずつけるのを阻そ止しするために、死ぬ覚悟だった――」
「しかし死ななかったな」
「――死ぬつもりだった。だからこそ、こうなったんだ。僕のしたことは、母の場合と同じだ。この人たちを、おまえから守ったのだ。おまえがこの人たちにかけた呪じゅ文もんは、どれ一つとして完全には効かなかった。気がつかなかったのか おまえは、この人たちを苦しめることはできない。指一本触ふれることもできないんだ。リドル、おまえは過あやまちから学ぶことを知らないのか」
「よくも――」
“我不希望任何人出手相助,”哈利大声说,在绝对的寂 静中,他的声音像号声一样传得很远,“必须是这样,必须是 我。”
伏地魔嘴里发出嘶嘶的声音。
“波特说的不是真话,”他说,一双红眼睁得大大的,“ 那不是他的做派,对吗?波特,你今天又想把谁当作盾牌呢? ”
“没有谁,”哈利干脆利落地说,“魂器没有了。只有你和我。两人不能都活着,只有一个生存下来,我们中间的一个人将要永远离开……”
“我们中间的一个人?”伏地魔讥笑道,他整个身体紧绷 着,红眼睛瞪着,像一条准备进攻的蛇,“你认为是你,对吗 ,那个有邓布利多在后面牵线而偶然幸存的男孩?”
“我母亲为救我而死,这是偶然吗?”哈利问。两个人仍 然在侧身移动,绕着圈子,始终保持着同样的距离。对哈利来 说,除了伏地魔,其他面孔都不存在了。“在那片坟地里我决定反抗,也是偶然?今晚我没有抵抗仍然活了下来,重新回来战斗,也是偶然?”
“偶然!”伏地魔叫道,但仍然没有出击。周围的人群凝 固不动,如同被石化了一般,礼堂里有好几百人,似乎只有他 们俩在呼吸。“偶然,运气,还有就是你动不动藏到大人身后哭鼻子,听任我为了你而杀死他们!”
“今晚你别想再杀死任何人了,”哈利说,他们绕着圈子 ,盯着对方的眼睛,绿眼睛对红眼睛,“你再也别想杀死他们任何一个,再也别想。明白吗?为了阻止你伤害这些人,我准 备了去死——?”
“你没有!”