ドーンという大砲のような音とともに、二人が回り込んでいた円の真ん中に、黄金の炎が噴ふき出し、二つの呪じゅ文もんが衝突しょうとつした点を印した。ハリーは、ヴォルデモートの緑の閃せん光こうが自分の呪文にぶつかるのを見た。ニワトコの杖は高く舞い上がり、朝日を背に黒々と、ナギニの頭部のようにくるくると回りながら、魔法の天井を横切ってご主人様の元へと向かった。ついに杖を完全に所有することになった持ち主に向かって、自分が殺しはしないご主人様に向かって飛んできた。的まとを逃さないシーカーの技で、ハリーの空あいている片手が杖を捕とらえた。そのとき、ヴォルデモートが両腕を広げてのけぞり、真っ赤な眼めの、切れ目のように細い瞳どう孔こうが裏うら返がえった。トム・リドルは、ありふれた最期を迎えて床に倒れた。その身体は弱々しく萎しなび、蝋ろうのような両手には何も持たず、蛇へびのような顔は虚うつろで何も気づいてはいない。ヴォルデモートは、撥はね返った自みずからの呪文に撃うたれて死んだ。そしてハリーは、二本の杖を手に、敵の抜け殻がらをじっと見下ろしていた。
身震いするような一瞬いっしゅんの沈ちん黙もくが流れ、衝撃しょうげきが漂った。次の瞬間しゅんかん、ハリーの周囲がドッと沸わいた。見守っていた人々の悲鳴、歓かん声せい、叫さけびが空気を劈つんざいた。新しい太陽が、強烈な光で窓を輝かせ、人々はワッとハリーに駆かけ寄った。真っ先にロンとハーマイオニーが近づき、二人の腕がハリーに巻きついた。二人のわけのわからない叫び声が、ハリーの耳にガンガン響ひびいた。そしてジニーが、ネビルが、ルーナがいた。それからウィーズリー一家とハグリッドが、キングズリーとマクゴナガルが、フリットウィックとスプラウトがいた。
ハリーは、誰が何を言っているのか一言も聞き取れず、誰の手がハリーをつかんでいるのか、引っ張っているのか、体のどこか一部を抱きしめようとしているのか、わからなかった。何百という人々がハリーに近寄ろうとし、何とかして触ふれようとしていた。
ついに終わったのだ。「生き残った男の子」のおかげで――。