１リットルの涙 - 第 １話 （ある青春(せいしゅん)の始(はじ)まり）

 体育館(たいいくかん)

「特別(とくべつ)じゃないただ特別(とくべつ)な気病(びょうき)に選(えら)ばれてしまった少女(しょうじょ)の録記(きろく)。」

じょうなんだいがくびょういん   しんさつしつ 
          常    南   大  学    病   院  の 診   察  室

水野(みずの)：人間(にんげん)の脳(のう)には約(やく)140億(おく)の経細胞神(しんけいさいぼう)とその10倍(ばい)もの経細胞神(しんけいさいぼう)を支(し)持(じ)する細胞(さいぼう)があります。それらの神経細胞(しんけいさいぼう)は枢神経中(ちゅうすうしんけい)と神経末梢(まっしょうしんけい)に分(わ)けられ、そのうち中枢神経(ちゅうすうしんけい)は脳大(だいのう)、脳間(かんのう)、脳小(しょうのう)、幹脳(のうかん)、髄脊(せきずい)に分(わ)かれています。その中(なか)で体(からだ)を自由(じゆう)にスム ズー に動(うご)かす働(はたら)きをしているのが小脳(しょうのう)、幹脳(のうかん)、髄脊(せきずい)です。お母(かあ)さん、これがお嬢(じょう)さんの脳(のう)の像画(がぞう)ですがこちらの正常(せいじょう)な脳(のう)の像画(がぞう)と比(くら)べてみてください。脳小(しょうのう)が萎縮(いしゅく)しているのが分(わ)かると思(おも)います。お嬢(じょう)さんの気病(びょうき)は何(なん)らかの理由(りゆう)で脳小(しょうのう)が萎縮(いしゅく)し そ、 こに存在(そんざい)するさまざまな経細胞神(しんけいさいぼう)がしだいに失(うしな)われていくというものです。つまり壊(こわ)れていくと理解(りかい)してください。

潮香(しおか)：壊(こわ)れる？

水野(みずの)：最初(さいしょ)はほとんど自覚(じかく)症状(しょうじょう)はありませんが、まず歩行(ほこうじ)時にふらつきが見み)られるようになります。倒転(てんとう)も多(おお)くなり自分(じぶん)と物(もの)の距離(きょり)がうまくとれなくなったり･ ･ ･ あるいはうまく字(じ)が書(か)けなくなったり･ ･ ･

(亜也(あや)：「気病(びょうき)は･ ･ ･ どうして私(わたし)を選(えら)んだのだろう。」) 

   水野(みずの)：言葉(ことば)をうまく話(はな)せなくなります。

(亜也(あや)：「お母(かあ)さん･ ･ ･ わたしは･ ･ ･ 何(なん)のために生(い)きているの？」)

水野(みずの)：症状(しょうじょう)はゆっくりですが確実(かくじつ)に進行(しんこう)します。

(亜也(あや)：「将来(しょうらい)を･ ･ ･ 想像(そうぞう)すると･ ･ ･ また･ ･ ･ 別(べつ)の涙(なみだ)が･ ･ ･ 流(なが)れる。」

「お母(かあ)さん･ ･ ･ わたし･ ･ ･ 結婚(けっこん)･ ･ ･ できる？」)