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ろうそくと貝がら(1)_小川未明童話集_日语阅读_日语学习网
日期:2024-10-24 10:29  点击:3392

 

一


海うみの近ちかくに一軒けんの家いえがありました。家いえには母親ははおやと娘むすめとがさびしく暮くらしていました。けれど二人ふたりは働はたらいて、どうにかその日ひを暮くらしてゆくことができました。
父親ちちおやは二年前ねんまえに、海うみへ漁りょうに出でかけたきり帰かえってきませんでした。その当座とうざ、たいへんに海うみが荒あれて、難船なんせんが多おおかったといいますから、きっと父親ちちおやも、その中なかに入はいっているのだろうと悲かなしみ嘆なげきました。
けれど、また、遠とおいところへ風かぜのために吹ふきつけられて、父親ちちおやはまだ生いき残のこっていて、いつか帰かえってくるのではないかというような気きもしまして、二人ふたりは、おりおり海うみの方ほうをながめて、あてなき思おもいにふけっていました。
「お母っかさん、お父とっさんは死しんでしまわれたんでしょうか。」と、娘むすめは目めに涙なみだをためて、母親ははおやに問といますと、
「いまだにたよりがないところをみると、きっとそうかもしれない。」と、母親ははおやも、さびしそうな顔かおつきをして答こたえました。
「ほんとうに、お父とっさんが生いきていて帰かえってきてくだされたら、どんなにうれしいかしれない。」と、娘むすめはいいました。
「生いきていなされば、きっと帰かえってきなさるから、そう心配しんぱいせずに待まっていたほうがいい。」と、母親ははおやは娘むすめをなぐさめました。
娘むすめは昼間ひるま仕事しごとに出でて、日ひが暮くれかかると家いえに帰かえってきました。窓まどを開あけると、かなたに青あおい海うみが見みえました。静しずかに、海うみのかなたが、赤あかく夕焼ゆうやけがして暮くれてゆくときもあります。また、灰色はいいろに曇くもったまま暮くれてゆくときもあります。またあるときは、風かぜが吹ふいて、海うみの上うえがあわだって見みえるときもありました。
月つきのいい晩ばんには、往来おうらいする船ふねも、なんとなく安全あんぜんに思おもわれますが、海うみが怒いかって、真まっ暗くらな、波音なみおとのすさまじいときには、どんなに航海こうかいをする船ふねは難儀なんぎをしたかしれません。
そんなとき、娘むすめはきっと父親ちちおやのことを思おもい出だすのでありました。もし父親ちちおやが、こんな嵐あらしの強つよい晩ばんに、海うみをこいで帰こえってこられたなら、方角ほうがくもわからないので、どんなにか難儀なんぎをなされるだろうと、こう考かんがえると、娘むすめはもはや、じっとしていることができませんでした。立たち上あがって、窓まどからいっしんに沖おきの方ほうを見みつめていました。

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10/10 00:06