ろうそくと貝がら(2)_小川未明童話集_日语阅读_日语学习网
日期:2024-10-24 10:29 点击:3341
二
父親の
行方がわからなくなってから、
二人は、
毎晩仏壇に
燈火をあげて
拝みました。
「お
母さん、
外はたいへんな
風ですね。お
父さんが、
今夜あたり
帰っておいでなさるなら、
沖は
荒れて
真っ
暗でどんなにお
困りでしょうね。」と、
娘はいいました。
「そんなことはないよ。こんな
晩にどうしてお
父さんが、あの
船で
帰っておいでなさるものか。そんなことを
考えないほうがいいよ。」と、
母親は
答えました。
「だって、
帰っておいでなさるかもしれないわ。わたしは、お
父さんが
見当のつくように、ろうそくの
火を
点してあげるわ。」と、
娘はいって、
窓ぎわに
幾本となく、ろうそくに
火をつけてならべました。
なにしろ
風が
強いので、ろうそくの
火は
幾たびとなく
消されました。けれど、
娘は
消えると、
点け、
消えると
点けして、
沖から、
遠く
陸に
燈火が
見えるようにと、
熱心にろうそくの
火を
点していたのであります。
娘は、ついに
家にありったけのろうそくを
燃やしつくしてしまいました。もはや、このうえは、
遠く
離れた
町にまでいって
買ってこなければ、
点けるろうそくはなかったのであります。
「おまえの
志は、よくお
父さんにとどいたと
思います。もうろうそくがなくなったから、さあ
休みましょう。」と、
母親はいいました。
夜も、いつしか
更けていました。
娘もしかたがないと
考えて、
二人は
戸を
閉めて
床に
入ろうとしました。
そのとき、だれか
戸をたたくようなけはいがしました。
「だれかきたようだ。」と、
母親はいいました。
「ほんとうに、だれか
戸をたたくようですね。いま
時分だれだろう。きっと、お
父さんが
帰っていらっしたのですよ。」と、
娘は
勇んで、さっそく、
戸口のところへ
走っていきました。
「お
父さんですか。」と、
娘は
叫びました。けれど、
戸の
外の
人は
返答をしませんでした。
「どなた。」といいながら、
娘は
戸を
開けました。すると、
黒い
装束をした
脊の
高い、
知らぬ
男が
突っ
立っていました。
娘はびっくりして、
後ずさりをしました。
黒い
装束の
男は、
家の
中へ
入ってきました。
分享到:
