ろうそくと貝がら(3)_小川未明童話集_日语阅读_日语学习网
日期:2024-10-24 10:29 点击:3343
三
「あなたは、どこからおいでなされました。この
真夜中に
家ちがいじゃありませんか。」と、
母親は
驚いた
顔つきで、
男をながめながらいいました。
「いや、
家ちがいじゃありません。じつはお
父さんからの
言づてがあったのでまいりました。」と、
黒い
装束をした
男は、
穏やかに
答えました。
「え、
家のお
父さんからですか?」と、
娘はびっくりして、
男のそばに
駆け
寄りました。
「そうです。あなたのお
父さんはいま、
遠くにいられます。けれど、それはじつに
暮らしいいところです。あなたのお
祖父さんも、いっしょに
住んでいられます。あなたが
毎夜、
思っていてくださることは、よくお
父さんにわかっていますので、どうか
心配せずにいてくれるようにとのお
言づてでございました。」と、その
男はいいました。
娘と
母親は、なおいろいろと、その
男に
父親の
身の
上を
聞こうと
思いましたが、
「
今夜は、もう
遅いから、いずれまたお
伺いいたします。」と、
男はいって、
袋に
包んだものを
差し
出して、
「これは、ほんの
土産です。
私が
帰った
後でごらんください。」と、
娘にその
袋を
渡して、
男はこの
家を
出て、どこへか
闇の
中に
消えてしまいました。
男が
去った
後で、
娘は
袋を
開けてみますと、その
中には、
無数の
金銀の
粉が
入っていて、
目もくらむばかりでありました。
二人は、いったいこれはなんだろうと
不思議がりましたが、
夜が
明けたらよく
見ようといって、
床に
就きました。
明くる
日、
二人はその
袋を
開けて
子細に
見ますと、
金でも
銀でもなければ、よごれた
貝がらでありました。
「あれはきっと、きつねかなにかの
化け
物だ。こんな
貝がらなどを
持って、おまえをだましにきたのだ。こんなものは
捨てておしまい。」と、
母親はいって、
袋の
中の
貝がらを、すっかり
窓の
外に
投げ
捨ててしまいました。
娘は、二、三
日たって
窓の
外を
見ますと、
捨てた
貝がらが、すっかり、
美しいかわいらしい
黄色な
花になっていました。
その
日から
娘は、
朝晩唄をうたいながら、その
花を
摘んで
遊びました。
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