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二挺のピストル_妖人ゴング_江户川乱步_日本名家名篇_日语阅读_日语学习网
日期:2024-10-24 10:29  点击:3335

ちょうのピストル


そして、老人は、にこにこ笑いながら、こんなことをいいました。
「わしは、きみが、いまくるか、いまくるかと、まい日、待ちかまえていたのですよ。奥のかやの中に寝ているきょうだいを、きみが、つれ出しにくることが、ちゃんと、わかっていたのでね……。」
すると、ごましお頭のいなかじいさんが、みょうな声をたてて笑いました。
「それじゃ、あんたは、わしがだれだか、知っているのかね……。」
「むろん、知っているよ。……きみは、ゴングという怪物だっ!」
ふたりは、縁がわから、すっくと立ちあがって、にらみあいました。
「うん、そのとおり。さすがは、名探偵の明智君だ。よろしい。それで、どうしようというんだね。」
いなかじいさんが、とつぜん、わかわかしい声にかわりました。
しらひげの老人は、明智小五郎の変装姿だったのです。こちらも、にわかに、わかわかしい声になって、
「こうするのだっ!」
と叫びながら、相手にとびかかっていきました。そして、
「マユミさん、俊一君、そこにあるほそびきを、持ってきなさい。こいつを、しばりあげてしまうのだっ。」
ああ、かやの中に寝ていたきょうだいは、花崎検事のむすめのマユミさんと、その弟の俊一君だったのです。
ふたりとも、いなかものに変装して、こんな山の中にかくれていたのです。
明智探偵の変装したしらひげの老人の声を聞くと、ふたりとも寝まきのまま、かやの中から、とび出してきました。マユミさんは、長いほそびきを持っています。
「ワハハハハハ……。」
ゴングの変装したいなかじいさんが、恐ろしい笑い声をたてながら、パッと、明智の手をすりぬけて、庭のまん中に立ちはだかりました。
「やっぱりそうだったな。そのふたりは、マユミと俊一だな。こんなところへかくしたつもりでも、おれのほうでは、なにもかも見とおしだ。明智先生、きみも、ぞんがい知恵のない男だねえ。」
「ウフフフフ……、知恵があるかないか、いまにわかるよ。きみは、たったひとりで乗りこんできた。こっちは三人だよ。三対一では、まず、きみの負けだねえ。」
明智の老人は、そういって、ゴングのじいさんに、とびかかろうとしました。
するとゴングは、右手を内ぶところにいれて、なにか、もぞもぞやっていましたが、その手をパッと出したときには、黒い小型ピストルが、にぎられていたではありませんか。
「ハハハハハ……、これがおれの奥の手だよ。ピストルはかならず二挺用意しているのだ。ひとつがだめになっても、もうひとつというわけだよ。」
たじたじとなった明智の顔を見て、ゴングは、とくいらしく笑いつづけていましたが、やがて、ピストルをマユミさんと俊一君のほうにふりむけました。
「きみたちふたりは、そのほそびきで、明智先生をしばるんだ。……明智君、縁がわに腰かけて、両手をうしろにまわしなさい。そう、そう、そうすれば、しばりやすくなる。さあ、子どもたち、明智先生のからだを、ほそびきで、ぐるぐる巻きにするんだ。はやくしろっ! でないと、このピストルを、ぶっぱなすぞっ。」
ああ、明智ともあろうものが、どうして、もう一つのピストルに気がつかなかったのでしょう。名探偵にしては、たいへんな手ぬかりではありませんか。いったい、マユミさんと俊一君の運命は、どうなることでしょうか。

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