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第1章 シャーロック・ホームズという人物(3)_緋色の研究(血字的研究)_福尔摩斯探案集_日语阅读_日语学习网
日期:2024-10-24 10:29  点击:3337

「もし彼とうまく行かなかったとしても、ぼくを責めないでくださいよ」スタンフォードは言った。「実験室でたまに顔を合わせる程度なので、彼がどんな人間か深く知ってるわけじゃないんです。ワトスンさんのたっての希望とあれば橋渡し役はしますが、結果については責任を持てませんよ」

「うまく行かなければ、別れればいいさ。だけどスタンフォード君」私は彼の顔に視線をひたと据えた。「その口ぶりからすると、どうやらこの件に深入りしたくない特別な理由がありそうだね。いったいなんだい? とんでもなく気性の荒い男なのか? まわりくどい言い方はなしにして、はっきり教えてくれよ」

「それが、難しくてどう言い表わせばいいかわからないんですよ」スタンフォードは苦笑いした。「ホームズという男は、ぼくから見ると科学にひどく凝り固まっていて──冷血に感じられるほどなんです。最新の植物性アルカロイドを友人に一服盛るくらいのことは平気でやりかねません。もちろん悪意からではなく、効き目を正確に調べたいという純粋な探究心からでしょうがね。誤解のないよう言っておきますと、あの男なら迷わず自分で飲んでしまうことだってありえます。正確無比な知識を得ることに尋常でない熱意を傾けてるんです」

「けっこうなことじゃないか」

「でも、限度というものがありますからね。解剖室の遺体をステッキで殴りつけるなんて、とても正気の沙さ汰たとは思えませんよ」

「殴りつける? 遺体を?」

「ええ。死後に打撲の痣あざがどれくらいできるかを調べるためらしいですよ。ぼくはその場面を実際にこの目で見ました」

「彼は医学生ではないんだったね?」

「そのとおりです。いったいなんの研究をしているやら、さっぱりわかりません。さあ、着きました。どういう人物なのかは、じかに会ってご自身で判断してください」

 スタンフォードが話しているあいだに、私たちは細い脇道に折れて小さな裏口を通り抜け、大病院の翼棟へ入っていった。私にとってはなじみのある場所なので、勝手はわかっていた。案内されるまでもなく殺風景な石の階段を上り、白い漆しつ喰くいの壁に灰褐色のドアが奥へ向かってずらりと並んでいる長い廊下を進んでいった。突きあたりのすぐ手前で、天井の低いアーチ形の通路に枝分かれし、その先は化学実験室に通じていた。

 実験室は天井が非常に高く、無数の瓶があっちでは整然と並べられ、こっちでは雑然と散らばっていた。部屋の方々に大きな低い実験用のテーブルがあり、その上にはピペットや試験管、青い炎がちらちら揺れるブンゼン・バーナーなどが乱雑に置いてある。室内にいるのはたった一人だけで、奥のテーブルにかがみこんで実験に没頭している様子だったが、私たちの足音を耳にしたのだろう、ちらりとこっちを振り向いて、歓声とともに勢いよく立ちあがった。

「やった! ついにやったぞ!」スタンフォードに向かって叫ぶと、男は試験管を手に私たちのほうへ駆け寄ってきた。「発見したんだ。ヘモグロビンによって沈殿する、いや、ヘモグロビンでないと沈殿しない試薬を!」たとえ金鉱を掘りあてた者でも、これほど嬉き々きとした表情はできないだろう。


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