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第3章 ローリストン・ガーデンズの怪事件(1)_緋色の研究(血字的研究)_福尔摩斯探案集_日语阅读_日语学习网
日期:2024-10-24 10:29  点击:3337

第3章 ローリストン・ガーデンズの怪事件

 ホームズの持論がきわめて実用的である証拠をまたひとつ突きつけられ、私は正直言って度肝を抜かれた。そして、彼のたぐいまれなる分析力に対して尊敬の念がいっきに強まった。にもかかわらず頭の片隅には、これは前もって示し合わせてあったのではないか、目的は皆目わからないが、私を驚かせようとしてひと芝居打ったのではないか、という疑念がこびりついたままだった。それとなくホームズの様子をうかがうと、届けられた手紙を読み終えて、放心状態といった感じのうつろな表情をしていた。

「いったいどうやって、ああいう推理を引きだしたんだい?」私は尋ねた。

「どんな推理?」いらだたしげな返事だ。

「さっきの人が海兵隊の退役兵曹だという推理だよ」

「なんだ、そんなつまらないことか」ホームズはぶっきらぼうに言ったが、そのあとで笑顔に変わった。「無礼な言い方をして、すまない。考え事をしていたものでね。いや、べつにかまわないよ。じゃあきみは、あの男が海兵隊の兵曹だったことに本当に気づかなかったのかい?」

「ああ、まったく」

「わかりきったことを説明するのは難しいな。きみだって二足す二が四になる理由を訊きかれたら、返答に窮するだろう? 自分にとっては当たり前の事実なんだからね。まあ、なんとかやってみよう。まず、あの男の手の甲に青い大きな錨いかりのタトゥーがあることは、ここからでもよく見えた。となると、船乗りかもしれない。だが物腰は軍人風で、ごていねいにお決まりの頰髭ひげまで生やしている。じゃあ海兵隊だろう。態度は偉ぶっていて、居丈高な印象を受けた。きみも気づいただろうが、頭をつんとそらして、ステッキを振りまわしていたね。さらに顔の感じから、真面目な堅気の中年男と判断できた。これらをすべて考え合わせた結果、退役兵曹と確信するに至ったのさ」

「おみごと!」私は賞賛の言葉を贈った。

「たいしたことじゃないよ」ホームズはそう言いながらも、感嘆する私の表情を見て、まんざらでもなさそうだった。「僕はさっき、近頃は本物の犯罪に乏しいと言ったが、前言撤回だ。ほら、これを見たまえ!」彼は例のメッセンジャーが届けた手紙を私に投げてよこした。

「驚いたな! これはひどい!」文面にすばやく目を通してから、私は言った。

「ああ、並みの事件ではなさそうだ」ホームズの声は落ち着きはらっていた。「そこに書いてあることを読みあげてくれないか?」

 手紙は次のような内容だった──

シャーロック・ホームズ様

 昨夜、ブリクストン通りのはずれにあるローリストン・ガーデンズ三番地で凄せい惨さんな事件が発生しました。午前二時頃、当方の巡査がパトロール中に空き家になっているはずの家に明かりがついているのを発見。不審に思って調べたところ、玄関のドアは開け放たれ、家具がひとつもない表側の部屋に立派な身なりの紳士が死体となって横たわっていました。ポケットからは、〝アメリカ合衆国オハイオ州クリーヴランド市、イーノック・J・ドレッバー〟と書かれた名刺が見つかりました。金品を奪われた形跡はなく、死因を示す手がかりも皆無です。室内には数箇所に血けつ痕こんが認められましたが、死体には外傷がいっさい見あたりません。この紳士がなぜ空き家へなど入ったのかも判明せず、途方に暮れております。なにからなにまで謎だらけの事件です。小生は正午までこの家に待機しておりますので、よろしければご足労願えませんでしょうか。貴殿が到着するまで、現場は手をつけずに保存しておきます。


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