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第4章 ジョン・ランス巡査の証言(3)_緋色の研究(血字的研究)_福尔摩斯探案集_日语阅读_日语学习网
日期:2024-10-24 10:29  点击:3336

 ランスはまもなく現われたが、眠っていたところを起こされてご機嫌斜めの様子だった。「詳しいことは署に報告してあるんですがね」

 ホームズはポケットから半ソヴリン金貨を出し、てのひらで思わせぶりに転がしながら言った。「ぜひともきみの口からじかに聞きたいんだ」

「そこまでおっしゃるんなら、話せることはなんでも話しますよ」巡査は金貨を見つめながら答えた。

「では、実際に起きたことをありのままに話してもらいたい」

 ランスは馬巣織りのソファに腰を下ろすと、眉み間けんにしわを寄せた。漏らさずなにもかも話そうと決め、神経を集中させているようだ。

「最初から順を追ってお話しします。わたしがパトロールの任務に就くのは夜十時から朝六時までです。巡回中は十一時頃に〈白鹿亭〉の酔った客が喧けん嘩か騒ぎを起こしたくらいで、まずまず静かな晩でした。ちょうど雨が降りだした午前一時頃、ホランド・グローヴ地区を受け持つ同僚のハリー・マーチャー巡査と会ったんで、ヘンリエッタ街の角で軽く立ち話をしました。そのあと、たぶん二時か、二時を少し過ぎてたかもしれませんが、もうひとまわりしてブリクストン通りに異状がないかどうか見てこようと思いました。悪天候の陰気な晩でしたから、途中で馬車が一、二台通り過ぎてったくらいで、人影はまったくありませんでした。ここだけの話ですが、一杯四ペンスのホット・ジンでもひっかけりゃ、しゃきっとするんだがな、と考えながら歩いてましたよ。そのときふと、例の家の窓に明かりがついてるのに気づいたんです。あのローリストン・ガーデンズの二軒が空き家になってることは前から知ってました。片方の借家人が腸チフスで死んだってのに、家主ときたら配水管をいっこうに直そうとしないんですよ。それじゃあ借り手がつくわけありませんやね。だから窓の明かりを見たとたん、こいつは妙だなと思いました。で、家の玄関へ行くと──」

「立ち止まって、庭木戸まで引き返したんだね」ホームズが口をはさんだ。「どうしてそんなことを?」

 ランスはぎょっとして、狼ろう狽ばいのくっきりとにじむ顔でホームズを凝視した。

「はあ、あの、実はそのとおりなんです」巡査は言った。「いや、驚きました。よくご存じですね。どうして引き返したかというと、玄関の前まで行ったらやけにしんとして薄気味悪かったんで、誰かに一緒に来てもらったほうがいいと思ったんです。この世のものならこれっぽっちも怖くはありませんが、あの世のものとなると話は別だ。ひょっとしたら、腸チフスで死んだ男が恨めしくて配水管を調べに来たかもしれんでしょう。そう考えたら急にぞっとして、通りにマーチャーの手提げランプが見えないかと門まで引き返したんです。マーチャーもほかの人間もいませんでしたがね」

「通りには誰もいなかったわけだね?」

「ええ、生き物は。犬一匹見かけませんでしたよ。しょうがないんで気を取り直して玄関へ戻り、ドアを開けました。家のなかは静まりかえってたんで、すぐに明かりの見えた部屋へ行ってみたんです。そうしたら、マントルピースの上にちらちら燃えてるろうそく──赤いろうそくがあって、その明かりで──」

「なにを見たかはわかっているから、先へ進もう。きみはしばらく室内を歩きまわったあと、死体のそばにひざまずいた。それから食堂を出て、廊下の奥にある台所のドアを開けようとした。さらに──」

 ジョン・ランスは恐怖におののいて飛びあがり、目に猜さい疑ぎ心しんを浮かべた。「さては隠れて見ていたな? いったいどこにいた!」大声で怒鳴った。「そんなに細かく知ってるとは、おまえ、怪しいじゃないか!」


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