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第1章 アルカリ土壌の大平原(4)_緋色の研究(血字的研究)_福尔摩斯探案集_日语阅读_日语学习网
日期:2024-10-24 10:29  点击:3338

「そうだよ。それに、飲み水もなくなってしまった。最初に倒れたのはベンダーさんだった。その次はインディアンのピート、マクレガーおばさん、さらにジョニー・ホーンズと続いて、かわいそうにとうとうおまえの母親も」

「じゃあ、ママは死んじゃったのね」エプロンに顔をうずめ、少女はしくしくと泣き始めた。

「そうなんだ。おまえとわたしを除いて、みんな遠いところへ行ってしまった。そのあと、こっちの方角にはひょっとしたら水があるかもしれないと思い、おまえを肩に担いでここまで懸命に歩いてきた。だがどうやら無駄だったようだ。望みはとうとうついえてしまったよ!」

「あたしたちも死ぬのね?」少女はすすり泣きをやめて、涙に濡ぬれた顔を上げた。

「ああ、そういうことだ」

「なあんだ、だったら早く言ってくれればよかったのに」嬉うれしそうに笑いながら少女が言う。「もっと怖い話かと思って、どきどきしちゃった。あたし、死んだって平気よ。ママとまた会えるんだもん。そうよね、おじちゃん?」

「ああ、そうだよ」

「おじちゃんも一緒に会おうね。すごく親切にしてくれたって、ママに話すわ。ママはきっと天国の入口であたしたちを迎えてくれるね。お水の入った大きな瓶と、あつあつのそば粉のパンケーキをどっさり持って。ボブおにいちゃんもあたしも両面を焼いたのが大好きなの。ねえ、あとどのくらい待つの?」

「さあ、わからんが、そう長くはないだろう」男は北の地平線にじっと目を凝らした。蒼そう穹きゆうに浮かぶ三つの小さな点が、こちらへ近づいてくるにつれぐんぐん大きくなっていく。点はあっという間に三羽の大きな鳥の姿となり、二人の放浪者の真上で円を描いたあと、彼らの頭上にそびえる岩へ舞い降りた。西部のハゲタカと呼ばれるノスリだ。死の前触れを意味している。

「あら、ニワトリさんよ」少女ははしゃぎ声をあげて不吉な鳥たちを指差し、驚かせて飛び立たせようと手をたたいた。「おじちゃん、この国も神様がおつくりになったの?」

「ああ、もちろんだとも」意外な質問に驚いている口調だった。

「神様はイリノイの国と、ミズーリ川もおつくりになったのよね」少女は話し続けた。「でも、この国をつくったのはきっと別の人よ。あんまり上手じゃないもの。川と木を忘れてるわ」

「お祈りをしようか」男がためらいがちに言った。

「まだ夜じゃないわ」

「かまわんさ。少しくらい時間がずれても、神様はお許しくださるだろう。草原にいたとき、毎晩みんなでお祈りしたね。馬車のなかで。あれと同じのをやってごらん」

「どうしておじちゃんはやらないの?」きょとんとして少女は尋ねる。

「忘れてしまったんだよ。背丈がこの鉄砲の半分くらいだった時分から一度もやってないんでね。うむ、だが、いまからでも遅くはない、もう一度覚え直そう。おまえがお祈りするのをよく聞いていることにするよ。声をそろえて唱えるところは一緒にやるとしよう」

「じゃあ、あたしたち、ひざまずかなくちゃね」少女はショールを地面に広げ、その上に膝ひざをついた。「それから両手をこうやって組むの。気持ちが静かになるでしょう?」


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