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第四章 禿げ頭の男の話(5)_四つの署名(四签名)_福尔摩斯探案集_日语阅读_日语学习网
日期:2024-10-24 10:29  点击:3336
「ショルトさん、あなたは終始、よいことをなさいました」と、彼はいった。「私どもとしては、事件の闇に包まれた部分を明らかにして、多少のご恩返しをしたいと思います。しかし、さきほどモースタン嬢がいわれたとおり、もう遅いですから、ただちに実行に移るのがよろしいでしょう」 ショルト氏は水ぎせるの管をていねいに巻くと、カーテンの後から襟と袖口にアストラカンをつけた、胸紐の飾り留めつきのひどく長めのコートを取りだした。その晩は、むし暑い陽気だったにもかかわらず、彼は襟元までボタンを掛け、さらに、耳被おおいのついた兎皮の帽子をかぶったので、人目に触れるのは、ぴくぴく引きつれる、やつれた顔面だけであった。
「あまり丈夫なたちではないものですから」と、彼は先頭に立って、廊下を歩きながらいった。「いやでも健康に気をつかいます」 馬車は外で待機していた。馭者がすぐさま全速力で出発したところを見ると、すべて手筈がととのっていたらしかった。サディアス?ショルトは車輪のきしむ音に負けないような声で、絶え間なくしゃべり続けた。
「バーソロミューは頭のいい男です」と、彼はいった。「どうやって宝物を捜し出したと思いますか? 彼は宝は家の中にあると判断して、家の容積を算出し、一インチもゆるがせにせずにあらゆる場所を測定したのです。彼は特にこういうことに気づきました。つまり建物の高さは七十四フィートあるのに、全部の部屋の高さを合計し、あいだの空間の分……彼は穴をあけてそれを確かめたのですが……その分を加えても、七十フィートにしかなりません。四フィートだけ足りないわけです。この分は家の上の方にあるとしか考えられません。そこで兄は、一番上の部屋のこまいヽヽヽと漆喰しっくいで固めた天井に穴をあけてみますと、そこにはすっかり密閉されて、誰にも気づかれなかった、別の小さな屋根裏部屋があったのです。その中央に、二本のたる木に支えられて宝の箱がありました。兄は穴の間から箱をおろし、そこにおいてあります。彼の見積りでは、宝石は五十万ポンドは下らない価値があるだろうとのことです」 この途方もない額を聞いて、私たちは目をみはって、互いに顔を見あわせた。私たちにモースタン嬢の権利を回復することができれば、彼女は貧しい家庭教師から、一躍英国一の相続人になれるのだ。こういう知らせを聞いて喜ぶのが、真の友達というものである。しかし、恥かしいことに私は、利己心の固まりのような人間だったので、心は鉛なまりのように重たく沈むばかりだった。私はたどたどしく、お祝いの言葉を二言三言口ごもると、ショルト氏のおしゃべりに耳も貸さず、うなだれて坐っていた。彼は明らかに慢性の憂鬱ゆううつ症であって、さまざまな症状について長々と弁じたてては、いろんなインチキ特効薬……そのうち何種類かは皮製のケースにいれてポケットに携帯していた……の成分と作用について教えてほしいというのを、私はうわの空で聞いていた。その時の私の答えを、彼が一つも覚えていなければいいと、今にして思う。ホームズのいうところによると、私がひまし油を二滴以上のむと大変危険だといったり、また、鎮静剤としてストリキニーネを多量に服用するようにすすめたりするのが、耳に入ったという。いずれにしろ馬車が急に停止し、馭者が跳びおりて扉をあけた時、私は本当に救われる思いがした。
「モースタンさん、これがポンディシェリー荘です」と、サディアス?ショルト氏は彼女に手をさしのべながらいった。
 

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