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第十章 島人の最後(2)_四つの署名(四签名)_福尔摩斯探案集_日语阅读_日语学习网
日期:2024-10-24 10:29  点击:3335

    汽艇ランチはどの桟橋や船着場にも見つからないし、まだ戻ってもいないんだ。かといって、足跡を消すために船を沈めたわけでもなさそうだ。もっとも、すべての可能性がなくなった場合、それは有力な仮説として残るわけだがね。あのスモールという男は、相当悪辣あくらつなことをやる奴だが、いわゆる知能犯というタイプじゃない。大体、そういったのは教育を受けた者に多い。そこで、ぼくはこう考えたんだ。あの男はしばらくロンドンにいたことがある……ポンディシェリー荘をたえず監視していたわけだからね……だから、すぐに脱出などはせずに、たとえ一日にしろ、多少準備の期間をおくはずだ、と。まあ、これが妥当な線だと踏んだわけだ」

「ちょっと無理なところがあるね」と私はいった。「奴はこの冒険に出かける前に、段どりをととのえてきたと見るほうが正しいのではないかね」

「いや、ぼくはそうは思わない。奴の隠れ家は万が一の時に引きこもるのに重宝だから、確実に用がなくなるまでは捨てないだろう。しかし、もう一つ考えが浮かんだんだ。つまりジョナサン・スモールは、自分の相棒の異様な風貌はいくら変装なんかしても、人のうわさの種になって、このノーウッド事件と結びつけられると感じたのではないか、と。奴は頭がいいから、そのくらいは気づくはずだ。連中は夜陰に乗じて隠れ家を出たから、夜の明けぬうちに帰るつもりだろう。スミス夫人の話だと、船に乗ったのが午前三時過ぎだ。一時間もすれば明るくなって、人々は起き始める。だから一味はそう遠くへは行っていない、そうぼくは考えたんだ。連中はスミスに充分口止め料を与え、最後の脱出のために船を押さえておいて、宝の箱を宿へ運んだ。二、三日の間に、新聞の見解とか自分達に嫌疑がかかっているかが分かるから、それから夜陰に乗じて、グレイブズエンドかダウンズあたりに停泊している船まで行く。おそらくそこからアメリカか植民地へ出航する準備がととのってるはずだ」

「しかし、 汽艇ランチはどうなんだ? 隠れ家までは運べまい」

「それはそうだ。見つからないけれど、そう遠くない所にあるに違いない、とぼくは考えた。それから、スモールの身になって、あの男がやりそうなことを想像してみた。船を帰したり、桟橋へ停めておいたりすると、かりに捜査の手が伸びた時に、追跡を容易にすることになる、奴はおそらくそう考えるだろう。それなら船を隠しておいて、必要とあらば、すぐ手に入れるにはどうすればよいか。自分があの男だったらどうするか、と考えてみたんだ。方法はたった一つだ。船大工か修繕屋の所へ船を持っていって、外見を少し変えさせるのだ。そうすれば、船は船置き場かドックヘ持っていってうまく隠すことができるし、二、三時間前に連絡すればすぐに使用できる」

「なるほど単純だね」

「こういう単純なことこそ、一番見落としがちなんだがね。とにかく、ぼくはこの考えにそって行動しようと決めたんだ。そこで直ちに、この無邪気な船乗りのいでたちで出かけていって、川下の船置き場を片っ端ぱしから当たってみた。十五軒無駄足を踏んだあげく、十六軒目で……ジェイコブスンの所だが……義足をつけた男が、二日前にオーロラ号を入渠させて、舵のことで細かな注文をしていったことが分かった。

『舵なんかちっとも具合悪かない』親方はこういうんだ。『あそこにある赤い筋のはいった船だかね』って。その時、誰が来たと思う? 他ならぬ行方不明の船長モーディケアイ・スミスなんだ。酒でちょっと変になっていたがね。もちろん、スミスだなんて分からなかったんだが、大きな声で自分の名前と船の名前を怒鳴どなったんだ。『今晩八時に取りに来るぞ』といって……『八時かっきりだぞ、いいか。お客さんが二人いて、待ってくれねえから』たっぷり報酬を受けたらしく、金をたくさん持っていて、皆にシリング銀貨をつかませているんだ。ぼくは少しあとをつけてみたが、飲み屋へ入ってしまった。そこで、ぼくは船置き場へとって返し、たまたま途中で少年の一人に出会ったから、船の見張りに立たせておいた。水際にいて、連中が出発する時に、ハンカチを振って合図することになっている。われわれは離れて待機するんだ。きっと宝もろとも連中を捕えられるだろう」

「それが本当のホシかどうかは別として、なるほど綿密に計画したものですな」とジョーンズがいった。「でも、わたしだったらジェイコブスン造船所に警官を張り込ませて、奴らがやってきたところを逮捕しますがね」

「それは無理でしょう。このスモールという奴はすごく頭のいい奴でね。まず偵察を立てて、少しでも危いようだったら、もう一週間じっと身を隠しているでしょう」

「でも、モーディケアイ・スミスを尾行して、奴らの隠れ家をつきとめる手もあっただろうと私がいった。

「そうしたらずい分、時間が無駄になる。スミスが連中の居所を知っているのは、まず百に一つの確率だ。あの男は酒と充分な金さえもらえば、文句はないんだよ。用がある時は、連中が使いを出す。いや、ぼくだって、他に考えられる方法は全て検討してみたが、これが一番だ」

 私たちがこんな話をしている間に、船はテムズ河にかかった長い一続きの橋の下を、くぐり抜けていた。旧市部を過ぎるとき、太陽の残光がセント・ポール寺院の尖塔の十字架に照りつけていた。ロンドン塔につく頃にはうす暗くなっていた。


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11/28 16:36