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第十二章 ジョナサン・スモールの不思議な物語(7)_四つの署名(四签名)_福尔摩斯探案集_日语阅读_日语学习网
日期:2024-10-24 10:29  点击:3336

 宝は彼が最初に襲われた時に、落とした場所にありました。箱は、今そこのテーブルに開けてあるやつと同じもんです。箱の上に彫り物をした取っ手があって、絹のひもで結んだ鍵が下がっていました。箱を開けたとき、灯の光は、パーショーにいた子供の頃に、本で読んだり空想したりしたような、宝の山を照らし出しました。見ていると、目がくらみそうでした。充分に目の保養をしてから、宝を取り出して、その目録を作ったのです。一級品のダイアモンドが百四十三個、その中には確か『ムガル帝国』といって、世界で二番目に大きいといわれるものも入っていました。それから、九十七個の実に見事なエメラルドと、小粒のも混じっていましたが、百七十個のルビーがあったのです。ざくろ石が四十個、サファイアが二百十個、めのうが六十一個、それとたくさんの緑柱石、しまめのう、猫目石、トルコ玉その他、後になっていろいろ知るようになったのですが、あの時は名前も知らなかったさまざまな宝石が出てきました。この他に非常に立派な真珠が三百個近くあり、そのうち十二個は、金の宝冠にちりばめられていたのです。ところで、これだけは箱から取り出されていて、あっしが後で箱を取り戻した時には、見えなくなっていましたがね。

 宝石を数えてから、箱に戻し、門のところへ運んで、マホメット・シングに見せました。それから、あっしらは互いに助けあい、秘密を守ることを改めておごそかに誓いあったのです。宝は国が再び平和になるまで、安全な場所に隠しておいて、それから平等に分配することに決めました。すぐ宝を分配してもしようがないでしょう。第一、高価な宝石を身につけていたら疑いを招くし、砦の中には個人の自由も宝の置き場所もなかったからです。そこで、あっしらは死体を埋めた広間へ箱を運び、一番丈夫な壁のれんがの下に穴を掘って、宝を隠しました。あっしらはその場所のことを丹念にメモしておいて、翌日あっしが、一人一枚ずつ、計四枚の見取図を書き、その下の方にあっしら四人の署名を添えたのです。それというのも、誰か一人が得することがないように、いつも各人がみんなのために事を行なうと、皆で誓ったからです。あっしはこの胸に手を当てて誓っていいが、これまでその誓いを破ったことは一度だってない。

 インドの暴動の話は、あっしが改めてするまでもないでしょう。ウィルスンがデリーを攻略し、コリン卿がラクノーの包囲を解いてから、反乱は腰くだけとなりました。新しい部隊が続々到着すると、ナナ・サヒブは国境を越えて逃げてしまったのです。グレイトヘッド大佐の別働隊がアグラへやってきて、民兵セポイを一掃しました。ようやく平和が戻ってくるかに見え、あっしら四人も、宝の分け前を持って無事に逃げ出す時も近づいたと思っていたのです。ところが、あっしらはアクメット殺しのかどで捕まり、一瞬にして希望はついえてしまいました。

 そいつはこんなふうな次第だったんです。

    藩王ラージャが宝石をアクメットに託したのは、この男が信用がおけると思ったからです。ところが東部の奴等は疑い深い。この藩王はどうしたかというと、もっと信用のおける召し使いをもう一人使って、最初の奴のスパイにしたのです。二番目の男は、決してアクメットから目を離さず、影のようにつけて行けと命令されました。

 あの晩、男はアクメットの後についていって、彼が戸口から入っていくのを見たのです。もちろん、彼はアクメットが砦に避難したものと考えて、翌日、自分も避難を願い出ましたが、アクメットの姿は見当たりません。これは変だと思って、彼は警備隊の軍曹に話したら、軍曹は司令官に報告したのです。ただちに隈なく捜索が行なわれて、死体が発見されました。そんなわけで、まさに安全と思ったその瞬間に、あっしら四人は捕えられて、殺人のとがで裁判にかけられたのです……あっしら三人は、その晩、門を警備していたという理由、そして四番目の男は、被害者と一緒にいたことが明らかだったという理由からですがね。法廷では、宝石の話は一つも出ませんでした。

    藩王ラージャは退位させられて、国外へ追放されていたから、宝石に特別の注意をはらう者はいなかったのです。しかし、殺人は完全に立証されて、あっしらは共犯ということが明らかになりました。三人のシーク人は終身懲役で、あっしは死刑と宣告されたが、あっしは後になって他の連中と同じ刑に変えられたのです。

 気がついてみたら、あっしらは実に奇妙な立場におかれていました。揃いも揃って四人が足をつながれ、まず脱出の見込みもない。それなのに一方では、それを役立てさえすれば、宮殿暮らしも夢でないような秘密を、腹に隠しているわけです。豪勢な宝物が、外で取りにくるのを待っているというのに、米や飲み水にありつくために、けちな小役人に蹴ったり殴られたりされるのを、じっとこらえているなんて、全く情ないことでした。気が狂っていたかも知れないところだが、あっしはいつもかなりしぶといほうだから、何とかがん張って時節を待ったのです。

 ついに時節が到来したかに見えました。あっしはアグラからマドラスヘ、そこからアンダマン群島のブレア島へ移されたんです。この植民地には白人の囚人は非常に少なく、あっしは最初から行儀よくしていたので、やがて特権階級の人間みたいになっていきました。ホープ・タウンという、ハリエット山の中腹にある小さな土地に、小屋を一軒与えられて、かなり自由にやれるようになったのです。それは荒涼とした、熱病にとりつかれた土地で、あっしらのちっぽけな開拓地を一歩出れば、野蛮な人喰い土人が歩きまわっていて、すきあらば毒の吹矢で射とうと待ち構えています。穴掘り、溝掘り、やまいもヤム植え、その他いろんなことをやらせられるので、一日中忙しかったんですが、ただ夜は、少し自由な時間がありました。あれこれやるうちに、あっしは外科医の助手になって薬を調合することを覚え、医学の知識を聞きかじるようになったのです。その間、ずっと脱走の機会をうかがっていましたが、どこへいくにも数百マイルはありますし、海上には全くといってよいほど風はなかったので、逃げ出すのは至難のわざでした。


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