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三 難問(5)_バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬)_福尔摩斯探案集_日语阅读_日语学习网
日期:2024-10-24 10:29  点击:3337

「風邪をひいたのかい、ワトスン君」

「それどころか、この煙だよ。体に悪いね」

「そうかい、なるほど。こいつあ、ちとひどすぎたかね」

「ひどいなんてもんじゃないよ! まったくたまらん!」

「じゃ、窓をあけろよ。ところで一日じゅうクラブにいたね」

「ホームズ、どうして」

「当ったかね」

「そのとおりだ。しかしどうして?」

 私があきれたような顔をしているのを彼は笑った。

「君はさも嬉しそうに溌刺 はつらつ と活気をただよわせて帰って来たが、それならこちらだっ

て、君を《さかな》にして少しばかり勘を働かせてみたくもなるさ。ひとりの男がだね、

雨がひっきりなしに降って路の汚ない日に外出しておいて、夜になって帰ってきたのを見

ると、洋服も汚さず、そのうえ帽子も光ってりゃ、靴までぴかぴかしている……こうな

りゃ、彼は一日じゅうどこかに《たまって》いたのさ。しかもその男には、親友ってほど

のものはいない。では彼はどこにたまっていたか? どうだい、わかりきっているじゃな

いか」

「うん、まあそりゃそうだ」

「世の中にはわかりきったことがいっぱいあるのに、誰も見ようとさえしないんだ。とこ

ろで僕はどうしてたと思う?」

「君も居すわりってわけだろう」

「ところが、もうデヴォンシャーに行ってきたんだ」

「心だけ?」

「そうさ、正確にいうとね。僕の体はこの肘掛 ひじか けにおさまったままだったよ。あきれた

ことに、《こころ》の留守中、《からだ》の奴が大きなコーヒーポットに二杯ものコー

ヒーと、驚くほどのタバコをのんでしまってるんだ。考えてみるとまったく残念だ。とに

かく君が出かけてから使いの者をスタンフォードの店へやって、沼沢 しょうたく 地帯の地図、軍

の陸地測量部のやつを買ってこさせた。そして僕の《こころ》は一日じゅうそこをさま

よってたわけだ。もうすでに、あすこら一帯を自由に飛びまわることができたと思ってる

んだがね」

「詳しい地図なんだろう?」

「すごく大きいやつだ」彼はその中の一部分を膝の上にひろげた。「ほら、ここだ。われ

われに関係のあるのは。この中央にあるのがバスカーヴィル邸だ」

「まわりは森なんだね」

「そうだ。そして《いちい》並木路とは書いてないが、この線がそうだと思うよ。ほら、

右手のほうに沼地があるだろう。この小さなひとかたまりの農家がグリムペンの小村で、

ここに、ドクター・モーティマーの本拠があるんだ。ご覧のとおり、ここ五マイル四方、

パラパラ家が建っているだけだろう。これがさっきの話にあったラフター邸だ。ここに家

のしるしがついているのが博物学者ステイプルトンの住居さ。たしか、そんな名前だった

ね。ここのふたつが沼地農夫の家で、ハイ・トーとファウルマイアだ。十四マイル離れた

ところにプリンスタウンの大刑務所がある。ここら一帯に荒涼とした死の沼が拡がってい

る。つまりここが悲劇の演ぜられた舞台であり、またわれわれがもうひと芝居、打とうと

している舞台でもあるわけだ」


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