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十一 岩山の男(3)
日期:2023-11-14 11:17  点击:267

「紳士だと思ったからこそ」彼女はあえいで言った。

「サー·チャールズをそんなに悪くいってはなりません。彼はたしかに手紙は焼いたので

す。でも手紙というものは焼けても判読できる場合がよくありますよ。さあ、その手紙の

ことを思い出したでしょうね」

「はい、たしかに書きました」彼女は胸の底からしぼり出すようにして叫んだ。「なるほ

ど、手紙は差し上げました。しかしかくす理由とてありません。恥じる理由もございませ

ん。私はあの方に助けを求めたのでございます。私はお目にかかって事情を申し上げれ

ば、援助頂けると思い、お会い下さるようお願いしたのです」

「しかし、どうしてあんな時刻に?」

「というのは、サー·チャールズは翌日、ロンドンにお発ちになり、二、三か月はおもど

りにならぬときいていたからですわ。私としてもあれより早く行けない事情がありまし

て」

「それにしても、堂々とお宅にうかがえばよいのに、庭で会おうなどというのは?」

「ああした時刻に、女が独身の男の方の家など、うかがえるものでしょうか」

「なるほど、で、おいでになったとき、どんな様子でした」

「私、うかがいませんでしたの」

「ライァ◇ズさん!」

「ええ、誓って申しますわ。私はうかがいませんでした。あることで、行けなくなってし

まったんです」

「あること、とは何です?」

「それは私事ですから、申し上げることはできません」

「するとあなたは、サー·チャールズが亡くなった、その場所、その時間に彼と会う約束

をしておきながら、あなたのほうで約束を破ったというのですね」

「そのとおりでございます」

 再三再四、私は彼女に質問を浴びせかけたが、結局それ以上は要領が得られなかった。

「ライァ◇ズさん」私はこの長い、結論の得られぬ会見を終えようと立ち上がりながら

言った。「ご存じのことをすっかり打ちあけて頂かなければ、あなたはご自分の身を危う

くしなければならぬことをご承知でしょうね。もし私が警察の助けを借りるようになった

ら、それがよくおわかりになりますよ。まったく身に覚えがないなら、最初にサー·

チャールズにあの日手紙を出さなかった、などと何故 なぜ おっしゃったのですか」

「そのことから、余計な尾ひれのついた話になって、世間にいやな噂が立つのをおそれた

のですわ」

「で、あなたはなぜサー·チャールズに手紙を焼いてくれと書かれたのです」

「あなた様はその手紙をお読みになっているのですから、おわかりでしょう」

「いや、私は全文を読んだとは申しませんよ」

「だって、さっき引き合いになさったじゃありませんか」

「あれは追伸のところでした。さっきも言いましたように、手紙は焼けていて、全部は読

めなかったのです。もう一度、おたずねしますが、あの方がお亡くなりになった日にとど

いた手紙を、どうして焼いてくれとご注文になったのです」

「本当にそれは私事でございます」

「世間の目をお避けになる理由をもっと」

「では申し上げます。あなたさまが私の不幸な生い立ちを多少なりともご存じならば、私

が性急な結婚をして、今となって後悔していることも知っておいででございましょう」

「一応知ってはおります」


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09/30 19:36