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十四 バスカーヴィル家の犬(1)_バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬)_福尔摩斯探案集_日语阅读_日语学习网
日期:2024-10-24 10:29  点击:3336

十四 バスカーヴィル家の犬

 シャーロック・ホームズの欠点のひとつは、これは実際、欠点と言ってよいのだろう

が、彼の計画全体が成就するその暁までは、誰にでも知らせることを極端にきらうことで

あった。一部分はたしかに彼の専横 せんおう な性格、つまり、自分の周囲の人間を支配したりお

どろかしたりすることの好きな性格から出ているものだが、一部分はまた、チャンスをつ

かむのに決してあわてたりしないという、彼の職業的警戒心にもとづくものである。だが

その結果は、彼の代理や助手のつとめを果している人間には、まったくやりきれたもので

はなかった。私もしばしばそれに悩まされては来たが、真っ暗闇の中に馬車を走らせてい

たその晩ほど、苦しい思いをさせられたことはなかった。

 大きな試練がわれわれの前にたちはだかっていた。そしてとうとう、われわれの努力も

まさに最後の土壇場 どたんば に来ていたのだ。それでもホームズはひと言も口を割らないので

あった。それで私はただ、彼の行動の筋をあれこれと思いめぐらせるだけであった。それ

でもとうとう、冷たい風が顔にあたり、道がせばまり、その両側がまっくらにひろがって

何も見えないところに来ると、われわれがふたたび沼地に戻って来たことがわかって、期

待に身内がふるえるのであった。馬の一足、車輪のひとめぐりごとに、われわれはすばら

しい冒険にますます近づいていくのであった。

 辻馬車の馭者の存在が話の妨げとなり、われわれの神経は興奮と期待にはりきっている

のに、とるにたりないことを話題にせざるを得なかった。それでも最後に、フランクラン

ドの家を通り過ぎ、メリピット荘に近づくと、不自然に気持を抑えつけた後のこととて、

本当に安堵 あんど の思いだった。いよいよ行動の現場に近づいたのだ。われわれは馬車を横づ

けにするようなことはせず、メリピット荘に通ずる道の入口で馬車をすてた。馬車に金を

払うと、すぐにクーム・トレイシーに帰れと命じ、われわれはメリピット荘に向って歩き

だした。

「武装してますか、レストレイド君」

 小柄な警部は微笑した。

「ズボンをはいているかぎり、腰にはポケットがあります。ポケットのあるかぎり、そこ

には何かが入っていますよ」

「それは結構! ワトスン君も僕も、万一に備えているのです」

「ホームズさん、この事件には相当周到ですね。どんな仕事なんです」

「待とうってわけです」

「おやおや、それにしてはあまり気持の良い場所じゃありませんね」

 警部は身ぶるいすると、暗い丘の斜面や、グリムペン沼地におおいかぶさっている巨大

な霧のひろがりをぐるりと見わたした。

「前方に灯が見えますよ」

「あれがメリピット荘です。わが旅の終りですよ。つま先立ちで歩くこと。それから声は

絶対に高くしないで下さい」

 われわれは行く手はその家とばかり、注意ぶかくじりじりと進んだが、二百ヤードほど

のところに近づくと、ホームズは止まれ、と命じた。


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