【第一章の神々】
宗ムナ像カタ三サン女ジヨ神シン
スサノヲの剣より生まれ、絶海の孤島にて航海の安全を見守る三姉妹
アマテラスとスサノヲの誓約うけいによって生まれた三柱の女神で、宗像大社や厳いつ
く島しま神社に祀られる。福岡県の宗むな像かた大社では『日本書紀』に従い、九州の陸
地にある辺へ津つ宮みやにイチキシマヒメ、陸に近い大島の中なか津つ宮みやにタキツヒ
メ、そして沖おき津つ宮みやにタキリビメを祀っている。やがて宗像三女神は各地に広が
り、瀬戸内海では厳島神社が創建された。
とくに宗像大社の沖津宮に注目したい。玄げん界かい灘なだの沖合いに浮かび、九州と
朝鮮半島のほぼ中間に位置するとともに大陸との中継点にあたるこの島にて、宗像三女神
を航海の守護神として信仰し始めたのは、海洋交易を行なっていた人々であると考えられ
る。
沖ノ島は陸から遠い孤島でありながら女人禁制の神域で、上陸する者は海水で禊をし、
また島から何かを持ち出すことは禁じられていた。四世紀から九世紀にかけての祭祀の跡
と一二万点にも及ぶ神宝が発見されており、朝廷もこの島で行なわれる祭祀を重んじてい
たことがうかがえる。