【第二章の神々】
須ス勢セ理リ毘ビ売メ
スサノヲの試練からオホクニヌシを助けた嫉妬深き正妻
スサノヲの娘で、オホアナムヂ(オホクニヌシ)の正妻。スサノヲに数々の難題を課せ
られたオホアナムヂを手助けし、ともに根の堅州国を脱出して宇う か能の山やまの山本
に宮を造った。名前のスセリは、「退すせる」「進む」などと同じ種類の語であり、スセ
リビメとは足を勢いよく動かして呪術的な動作を行なう巫女を示すと考えられる。
また、スセリビメの母は「記紀」に登場しないため不明であるが、スセリビメは父であ
るスサノヲの神格を受け継いだ女神か、またはスサノヲに仕えた巫女が神格化されたもの
とも考えられる。
夫オホアナムヂは、因幡のヤガミヒメとすでに婚約しており、そればかりか北陸のヌナ
カハヒメと歌を交わして結婚したため、スセリビメは激しく嫉妬する。そのため、オホク
ニヌシはスセリビメに別れを告げて出雲から大和へ逃げようとするが、スセリビメに歌を
贈られると、和解して出雲に居を定めた。
オホクニヌシとヌナカハヒメ、スセリビメの間で交わされた歌は「神かん語がたり」と
呼ばれ、激しい感情をそのまま表現した演劇的な構成になっている。