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第一部 第六章 薄明(4)
日期:2024-01-11 16:50  点击:300

「ここで忘れてならないのは、ワトソン君、どんなことが起こったにしろ、それはきわめ

て異常なことだという事実だ。さて、さらに仮定をおし進めてみるが、あのふたりは――

必ずしも不義の仲といわないが――犯人が去ってから、自分たちのおかれた立場がきわめ

てまずいことに気づいた。自分たちがやったのでもなく、またみてみぬふりをしたのでも

ない、ということを立証するのがむずかしいことに気づいたわけだ。そこであわてて、ず

さんな対策をこうじた。犯人が窓から逃走したとみせかけるために、バーカーが、自分の

はいていたスリッパで窓わくに血のあとをつけたのだ。さらに、銃声をきいたのがふたり

だけらしいのをみて、型どおり、ベルを鳴らして人を呼んだわけだ。ただし、事件が起

こってからたっぷり三十分もたったあとでね」

「でもどうやってそういったことを証明するつもりだい?」

「それだが、もし外部のもののしわざということになれば、そいつを探しだしてつかまえ

ればよい。これにまさる証明はないだろう。しかしもしそうではないとしたら――いや、

科学の力はまだまだそれほどみすてたものではないよ。じつはね、あの書斎で一晩ひとり

きりですごしてみれば、大いに得るところがあるはずだと思っているのさ」

「一晩ひとりきりでだって!」

「もうすぐいこうと思っている。そのことは、あの尊敬すべきエイムズともすでに打ちあ

わせずみなんだ。あの男はバーカーを心から慕っているわけではないからね。あの部屋の

雰囲気にじっとひたってみれば、なにか思いつくかもしれないと思っているのだ。ぼくは

『土地の霊』の信奉者だからね。君はにやにやしているけど、ワトソン君、まあみていた

まえ。ところで、きみは例の大きなこうもりがさをもってきているだろうね?」

「あるよ」

「じゃ、あれを貸してもらいたいのだが」

「いいとも。でもまたひどくたよりない武器だな! もし危険な目にあったら――」

「なに、たいしたことはないよ、ワトソン君。もし本当に危険なようだったら、きみにご

同行をお願いしているさ。でもかさだけは借りていくよ。いまはさしあたって、警部たち

がタンブリッジ・ウエルズから帰ってくるのを待つのみだ。彼らは、向こうで、自転車の

持主らしき人物を探しているのさ」

 マクドナルド警部とホワイト・メイソンがもどってきたのは、もう日が暮れてからだっ

た。ふたりは、捜査が大進展をとげたといって、意気揚々とひきあげてきた。

「いやはや、私はね、これまでたしかに外部のもののしわざという説には疑問をもっとっ

たですが」マクドナルドが言った。「その疑いもいまではすっかり晴れましたよ。自転車

の持主が判明したんです。その男の人相もわかりました。大収穫というわけです」

「いよいよ先がみえてきたという感じだね」ホームズが言った。「おふたりに心からおめ

でとうといわせてもらいますよ」

「まずですね、ダグラス氏が、事件の前日タンブリッジ・ウエルズヘいってきてから様子

がおかしくなった、という事実から出発したのです。そうだとすると、タンブリッジ・ウ

エルズで何か危険を身に感じたにちがいないわけです。だから、もし犯人が自転車でやっ

てきたとするなら、まず考えられるのが、当然、タンブリッジ・ウエルズから、というこ

とになります。そこで、例の自転車を向こうへもっていって、いろんなホテルに心あたり

がないかどうかあたってみたのです。目撃者はすぐ現われました。イーグル・コマーシャ

ル・ホテルの支配人が、これなら二日前から泊まっているハーグレイヴと名のる男のもの

だというのです。その男の持物は、その自転車と小さな手さげかばんがひとつだけで、し

かも宿帳には、ロンドンからとだけあり、はっきりした住所は書いてありません。かばん

はたしかにロンドンでつくられたもので、中身もイギリスのものばかりでしたが、本人が

アメリカ人であることはまちがいないそうです」

「それは、それは」ホームズはうれしそうに、「ぼくはここでワトソン君といたずらに理

屈をこねまわしている間に、きみたちは着実に仕事をすすめてきたわけだ。実践第一とい

う教訓だね、マック君」

「そう、それですよ、ホームズさん」警部が得意そうに言った。

「それにしても、この事実はきみの推論にぴったりとあっているじゃないか」私がホーム

ズに言うと、

「あってるあってないはさておき、マック君の話を最後まできいてみよう。その男の身元

を知る手がかりはまったくつかめずかい?」

「身元がばれることを非常に恐れたとみえ、ほとんど皆無にひとしいのです。書類や手紙

らしきものはまったくみあたらず、衣類にもネームのようなものは全然ついていません。

この地方の自転車旅行用地図が、寝室のテーブルにおいてあっただけです。で、男は、き

のうの朝、朝食をすませたあと自転車で出かけたきり、行方不明だということです」

「そこがどうにも解 げ せないのです、ホームズさん」ホワイト・メイソンが口をはさんだ。


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09/30 13:25