天孫降臨と三種の神器
天孫降臨に副えられた三種の神器とイツトモノヲ
◆天岩屋で活躍した神々がニニギにつき従う
サルタビコの先導を得たニニギはアメノコヤネ、フトダマ、アメノウズメ、イシコリド
メ、タマノオヤの五神を従えて天降ることになった。この神々は天あまの岩いわ屋やから
アマテラスを引き出す際に活躍した神々と同一である。これはどちらの神話も、大だい嘗
じよう祭さいを意識したものだったからだという。これら五柱の神々はのちに五つの技術
集団の祖となる。すなわち、アメノコヤネは祭祀を担った中臣氏の、フトダマは忌いん部
べ氏の、アメノウズメは猿女氏の、イシコリドメは鏡かがみ作つくり氏の、タマノオヤは
玉たまの祖おや氏の祖となるのである。
一方『日本書紀』では随伴神がほとんど登場しない。これは『古事記』が氏族の系譜を
語る物語であることと関係があるようだ。
これら五いつ伴ともの緒おとともに、ニニギには王権のシンボルでもある三種の神じん
器ぎが与えられた。三種の神器とは、八や尺さかの勾玉、アマテラスそのものの象徴であ
る鏡、ヤマタノヲロチの尾から出た草くさ薙なぎの剣つるぎ(『日本書紀』では天あめの
叢むら雲くもの剣つるぎ)である。これらを継承することが王権の連続性を意味すること
になる。
また、オモヒカネ、タヂカラオ、アメノイハトワケといった神々もこれに加わり、オモ
ヒカネに至っては祭事を司ることを命じられた。これを受けてニニギとオモヒカネは、伊
勢の五十鈴宮の内宮を祀り、外宮に食物神トヨウケを祀っている。『古事記』ではこれを
伊勢神宮の起源としている。
かくして一行は日向の高千穂の地に降り立つ。ここでニニギは「遠くは朝鮮に面し、近
くは笠沙の岬にまっすぐ通じている。朝日、夕日も輝き、最上の土地だ」と賞賛して壮大
な宮殿を築く。この「日向の高千穂」については、宮崎県の高千穂や鹿児島県の霧島連峰
がその候補地に挙がっているが、はっきりしない。