皇后選定
七人の娘たちのなかから見つけ出されたイハレビコの伴侶
イハレビコには日向にいるときに娶ったアヒラヒメがおり、タギシミミ、キスミミとい
うふたりの御子を儲けていた。だが天下の主となった今では皇后となるにふさわしい女性
が必要だった。そこへ、オホクメが耳寄りな話を持ち込む。
それによれば、あるとき三輪山のオホモノヌシが丹に塗ぬり矢や(朱で赤く塗った矢)
となり、見み初そめた女性セヤダタラヒメの女陰を突いた。ヒメがその矢を持ち帰ると、
矢はたちまち美男となり、その娘と結ばれた。このふたりの間に生まれたのがヒメタタラ
イスケヨリヒメという女性だった。神話には丹塗矢で女陰を突くというパターンが多い。
矢は男根の象徴とされ、オホモノヌシとの結婚は日本各地にも多く伝わる蛇神との神婚説
話である。そしてイスケヨリヒメという名前にも「神がよりつく」の意が込められてお
り、巫女的性格を持ち合わせていた。「タタラ」から、製鉄を思わせる名前でもある。
興味を覚えた天皇は、その後、野遊びをする七人の乙女を見て、イスケヨリヒメが誰か
を察し、歌で求婚。そして歌を交わしてヒメは皇后に収まったのである。