【第三章の神々】

　 豊トヨ玉タマ 毗ビ売メノ命ミコト

　　海原と地上の通路を閉じた海の女神

　海神の娘で、ホヲリの子を宿す。だがホヲリは約束を破って産屋をのぞき見し、トヨタ

マビメの異形の姿を見てしまう。これを恥としたトヨタマビメは、海原と地上の通路を閉

じて子を残し、海に帰ったと伝えられている。

　豊玉のタマは魂あるいは真珠を表わし、その名は霊力豊かな女性を意味する。神話で

も、異界からやってきたホヲリという神性を迎え入れた巫女のような存在である。「見る

な」の禁きん忌きを破る物語は、イザナキ・イザナミの話によく似ているし、世界各地の

神話にも広く見られる。