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花婿の正体(3)
日期:2024-01-29 14:07  点击:283

「レドンホール郵便局留めにしていました。女性からの手紙が会社に届くと、ほかの社員

たちにひやかされるからと彼がいいましたので。わたしは、女からだとわからないように

タイプ打ちにしましょうかとききました。ホズマーはタイプ打ちの手紙をくれてました

し。でもあの人、それはいやだというんです。わたしが手で書いた手紙は、いかにもわた

しからの手紙という感じがするけど、タイプ打ちの手紙だと、二人のあいだに機械が割っ

て入るようでいやだといって。それって、あの人がわたしのことをどんなに愛しているか

という証拠ですよね、ホームズさん。それと、細かいことまでよく気がつく人だというこ

とでもありますわ」

「非常に示唆に富むエピソードですね」ホームズはいった。「細かい点こそ、なににもま

して重要だというのがわたしの長年のモットーでしてね。ほかにもホズマー・エンジェル

さんに関して、なにか覚えてらっしゃいますか? 小さなことでもけっこうですから」

「あの人はとても恥ずかしがり屋なんです、ホームズさん。わたしと散歩するのも、人目

を引くのがいやだから、昼間より夕方のほうがいいといいました。内気で礼儀正しい人で

す。声までおとなしくて、子供のころに扁へん桃とう腺せんがひどく腫はれて、そのせい

でのどが弱くなったといっていました。それで、ささやくようなこもった声しか出せませ

んの。いつも地味ですけど、きちんとした服装をしています。わたしといっしょで目が悪

くて、強い光を避けるために、サングラスをかけています」

「なるほど。それで、お父さんのウィンディバンクさんがまたフランスへいってしまわれ

てからどうなりました?」

「ホズマー・エンジェルさんは、また家にやってきて、お父さんが帰ってくる前に結婚し

ようといいました。こわいくらい真剣でした。聖書に手を置いて、なにがあっても彼のこ

とを裏切らないと誓わされたくらいです。母は、誓いをさせられるくらい当然で、それも

彼の愛情の証拠だといいましたけど。母は最初っからエンジェルさんのことが気に入って

いて、わたしよりエンジェルさんのほうが好きなんじゃないかと思うくらいです。そし

て、母とエンジェルさんで話し合って、一週間以内に式をあげようということになりまし

た。義父はどうするのかとわたしはきいたんですが、母もエンジェルさんも、それは気に

しなくていい、あとから知らせればいいんだといいますし、母はウィンディバンクには自

分からうまく説明してあげるからといいました。でもわたしはそれではよくないと思った

のです、ホームズさん。義父はわたしより五つ上なだけですから、許可を求めるというの

も変な感じですけど、なんにせよ、こそこそするのがいやでした。それで、義父の会社の

ボルドー支店へ手紙を書いたのですが、その手紙はちょうど結婚式の当日に返ってきまし

た」

「じゃあ、お父さんに届かなかったんですね?」

「はい、義父はその手紙が着く前にイギリスへ向けて出発していたんです」

「ほう! それは残念でした。それで、あなたの結婚式は金曜日にすることになったので

すね? 教会でなさる予定でしたか?」

「はい。でも、ごく地味にやるつもりでした。キングズ・クロスの近くのセント・セイ

ヴィア教会で式をして、そのあとセント・パンクラス・ホテルで朝食会をする予定でし

た。ホズマーが二輪馬車で迎えにきてくれたのですが、わたしと母と二人おりますので、

わたしたち二人をその二輪馬車に乗せて、ホズマーは辻つじ馬車に乗りました。四輪馬車

でしたが、そのときはそれしかあたりにいませんでしたので。わたしと母が先に教会へ着

いて、そのあと辻馬車がきたので、ホズマーがおりるのを待ってたんですが、いつまで

たってもおりてこないんです。それで、御者が御者台からおりてきて客車のなかをのぞき

こんだら、なかにはだれもいなかったんです! 御者はホズマーが馬車に乗りこむのをこ

の目で見たといいますし、その後なにが起こったのかはさっぱりわからないというので

す。それが、このあいだの金曜日のことです、ホームズさん。それ以来、ホズマーがどう

なってしまったのか、手がかりとなるようなことはなにひとつありません」

「あなたはその男にずいぶんひどい目に遭わされたのですね」

「いいえ、とんでもない! ホズマーはとてもやさしいいい人なんです。あんなふうにわ

たしを置き去りにするはずがありません。式の朝もずっとわたしにこういってたんです

よ。なにがあっても心変わりしないでくれ、万一、予期せぬことが起こって離れ離れに

なったとしても、ぼくに対して誓ったことを忘れないでくれ、ぼくはいずれかならず、き

みを迎えにもどってくるからって。結婚式の朝にそんなことをいうのはちょっと変だと思

いましたけど、そのあと起こったことを考えると、あのときいっておくべき言葉だったの

かなと思います」

「たしかにそうですね。では、あなたご自身としては、エンジェルさんになにか予期せぬ

災難でも降りかかったと思ってらっしゃるのですね?」

「はい、そうです。きっとホズマーはなにかの危険を察知していたんだと思います。でな

いとあんなことをいうはずありませんわ。そして予想していたことが起こったんです」

「でもそれがいったいなんなのかは、まったくわからないと?」

「ええ」

「ではもうひとつ質問があります。あなたのお母さんはこんどのことをどのようにお考え

ですか?」

「母は怒っていて、もうこの件については二度と口にするなとわたしにいいました」

「それでお父さんのほうは? お父さんには話したのですか?」

「はい。義父も、なにかが起こったという点ではわたしと同じ意見なのですが、ホズマー

の消息はいずれわかるだろう、くらいにしか思っていないようです。でも、義父もいって

ることですが、わたしを教会に置き去りにしてなんの得があるのでしょう? もしホズ

マーがわたしからお金を借りていたり、わたしと結婚して財産を譲り受けたりしていたな

ら理由はわかりますが、ホズマーはお金のことはまったくきっちりしていて、わたしから

一シリングでも受け取ろうとしませんでした。それなのに、いったいなにが起こったので

しょう? どうして手紙ひとつ送ってこないんでしょう? 考えていると、頭が変になり

そうです。夜も一睡もできないんです」メアリー・サザランドはマフから小さなハンカチ

を取り出して顔にあて、むせび泣きはじめた。

「わたしが調べてあげますよ」ホームズは立ち上がっていった。「きっとはっきりした結

論が出ると思います。だから、この件はわたしにまかせて、あなたはこれ以上、くよくよ

考えるのはやめなさい。とくに、ホズマー・エンジェル氏のことは、頭のなかから消して

しまったほうがいいですね。向こうはもう消えてしまっているんですから」

「では、もう二度と彼には会えないのですか?」

「残念ながらそうです」

「じゃあ、彼はどうなってしまったのですか?」

「その問題はわたしにまかせてください。それで、ホズマー・エンジェル氏の詳しい人相

を教えてください。それと、彼からきた手紙で、なくてもいいものをどれか預からせてく

ださい」

「このあいだの土曜のクロニクル紙に、ホズマーを探すためにたずね人の広告を出しまし

た。これがその切り抜きで、こっちは彼からきた手紙です。四通あります」

「ありがとう。あなたの住所は?」

「キャンバーウェル区、ライオン・プレイス三一番地です」


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09/30 05:30