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第二卷 第三話  クリスマスケーキ 2_鴨川食堂(鸭川食堂)_日语阅读_日语学习网
日期:2024-10-24 10:29  点击:3336
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  家を出てから京都駅に着くまで、ずっとクリスマスソングが鳴っていたような気がする。指や足で、知らずに拍子を取っていることに、正幸と良枝は苦笑いした。
  「翔にあなたがサンタさんやと見抜かれたときのこと、覚えてはります?」良枝は七条通を北に渡り始めた。
  「あれにはまいったなぁ。『サンタさんてパパやったんやな』と五歳の子供に言われたら、誰でもうろたえるわな」
  正幸が屈託のない笑顔を見せた。
  「あなたが枕元にプレゼントを置くところ、薄目開けて見てたなんて、翔らしいて言うたら翔らしいことですけどね」
  そう言って、良枝は『鴨川食堂』を見上げた。
  二階の窓に透けて見えるのはクリスマスツリーだろうか。レースのカーテン越しに色とりどりのオーナメントが見え隠れしている。
  「利発な子やったな」
  正幸は窓に目を留めてから、厚い雲に覆われる空を見上げた。
  いつの間にかふたりの足元に寄って来ていたトラ猫が、ひと声鳴いた。
  「どこの猫ちゃんなの」
  屈かがみ込んで良枝が頭を撫なでた。
  「うちの猫ですねん。いっつも寝てばっかりなんで、ひるねて名前付けたんですよ」店から出て来て、こいしが良枝の隣に屈んだ。
  「この前お邪魔したときは居ませんでしたね。鳴き声ひとつしなかったようでしたが」正幸が二度ほど首をかしげた。
  「食べもん商売の店に猫なんか入れたらアカンて、お父ちゃんが言うもんやさかい、ご近所さんに面倒見てもろてるんです」
  こいしがひるねを抱いて立ち上がった。
  「うちも同じでしたな。店と家は別やからええと思うたんですが、菓子に毛でも入ったらどうするんや、と父に言われて、犬を飼うのを諦めた経験があります。それが頭に残ってたもんやさかい、翔が子犬を拾うて来たときも……」正幸が声を落とした。
  「寒いさかい、どうぞお入りください」
  玄関先にひるねを置いて、こいしが引き戸を開けた。
  「またね、ひるねちゃん」
  先に正幸が敷居をまたぎ、名残惜しそうに小さく手を振る良枝が後に続いた。
  「なんや甘い匂いが充満してますな。ケーキ屋さんみたいや」店に入るなり、正幸が頬をゆるめた。
  「お客さんに言われましたんよ、洋菓子屋に鞍くら替えするんか、て」こいしが笑った。
  「朝から晩までケーキを焼き続けてましたんや。ようお越しいただきましたな」流が厨房から出て来た。
  「ほんまに申し訳ないことで」
  コートを畳んで、良枝が頭を下げた。
  「何をおっしゃる。大事な仕事ですがな。どうぞお掛けください」流に促されて、ふたりは席に着いた。
  「ちょっとはクリスマスらしいにせんとね。こっちはわたしの仕事です」こいしは、赤いギンガムチェックのクロスをテーブルに掛けた。
  「こいし、お前ツリー飾るのを忘れてるのと違うか」「うっかりしてたわ。すぐに取って来ます」
  舌を出したこいしは、小走りで厨房に入り、階段を上るような大きな足音を立てた。良枝は窓越しに垣かい間ま見たツリーを頭に浮かべた。
  「お捜しのクリスマスケーキを見つけるには見つけたんですけど、それを再現するのに手間取りましてな。なんせケーキてなもん、焼いたことおへんさかい。ようやく今朝になって同じもんを焼くことが出来ました。すぐにご用意します」言い残して、流は厨房への暖簾を潜くぐった。
  しんと静まり返った店に、階段を駆け下りる音が響く。
  「すんませんね、バタバタして」
  両手にツリーを抱えたこいしが店に戻り、置き場所を目で探っている。
  「いろいろお気遣いいただいて申し訳ないです」正幸が立ち上がった。
  「せっかくやから、ご主人の横に置かせてもらいますね」正幸の背中をすり抜けて、こいしが壁際にツリーを置いた。
  「うちも久しぶりにツリーを飾りました。やっぱりいいものですね」良枝が目を細めた。
  「お飲みもんは、どないしましょ? コーヒーかお紅茶か、日本茶もご用意出来ますけど」
  テーブルクロスを整えながら、こいしが訊いた。
  「お茶をお願いします。コーヒーも紅茶も飲み慣れないもので」良枝の言葉に正幸がうなずいた。
  「和菓子屋さんて、皆さん日本茶ばっかりなんですか」「昔からのお店の方は、たいていそうなんと違いますか。今風のスイーツを作ってはるとこは別ですやろけど」
  こいしの問いかけに正幸が苦笑しながら答えた。
  「こいし、取り皿を用意してくれるか」
  クリスマスケーキを載せた銀盆を、両手で捧ささげ持つ流がテーブルの傍に立った。
  「ケーキやし洋皿の方がええね」
  「ジノリの白がええ。フォークも一緒にな」
  ふたりの前に、流がクリスマスケーキを置いた。
  「これがあのときの……」
  正幸が覆いかぶさるようにして、ケーキに目を近付けた。
  「大おお島しま聡さと子こさんがご霊前に供えられたクリスマスケーキです」流がケーキをじっと見つめる。
  「この匂い……。覚えがあります」
  良枝が鼻をひくつかせた。
  「ほうじ茶がええと思うたんですけど、緑茶の方がよかったですやろか」こいしが益子焼の土瓶をテーブルに置いた。
  「ほうじ茶がありがたいです」
  正幸が小さく微笑んだ。
  「ナイフを置いときますんで、お好きなようにして召し上がってください」銀盆を小脇に挟んで、流が一礼した。
  「たっぷり入ってますけど、足らんかったら言うてくださいね」こいしが唐津焼の湯呑に茶を注いで、厨房に下がって行った。
  ケーキを前にして、ふたりは身じろぎひとつせず、じっと向き合っている。
  直径二十センチほどのケーキは、たっぷりと白い生クリームをまとい、上面は苺で埋め尽くされている。サンタクロースを模かたどったマジパン、星型の板チョコレートがその隙間に飾られている。
  「こんなんやったんやな」
  「こんなのだったんですね」
  ふたりはただただケーキに見入っている。
  三分ほども経ったころ、意を決したように正幸がケーキナイフを取った。
  ケーキの中央にナイフを当て、しっかりと握りしめたまま動くことがない。
  「やっぱりお前やってくれ」
  額に薄うっすらと汗をかいた正幸が、ナイフを良枝に渡した。
  「翔に、翔に見せてやりたかったですね」
  ナイフを持つ良枝の目尻から涙があふれ出た。
  「このまま持って帰ろ。仏壇に供えて、それから食べよやないか。翔に食べさす前に、こんな旨そうなケーキ食べられんわ」
  正幸が大粒の涙を流した。
  「そうそう、言い忘れましたけどな」
  流が暖簾の間から顔を覗かせた。
  口を開こうとした良枝を遮るように流が言う。
  「ご仏前にお供えする分は別にもうひとつ用意してまっさかい、安心して召し上がってください」
  言い終えて、流が暖簾を戻した。
  「何もかもお見通しみたいやな」
  正幸が指で目尻を拭った。
  「お言葉に甘えていただきましょか」
  良枝がケーキにナイフを入れた。
  クリームからスポンジケーキ、スムーズに入ったナイフが最後に抵抗を見せた。
  「一番底には固い生地が敷いてあるみたいですね」良枝が二枚の皿に取り分けた。
  「なんとも言えん、ええ匂いや」
  フォークを手にした正幸は手にとった皿に鼻を近付けた。
  「美味しい」
  先に口に入れた良枝が叫んだ。
  「ほんまや。こら旨いなぁ」
  味わいながら、正幸が満面に笑みを浮かべた。
  「こんな味だったんですね」
  「こんな味やったんやなぁ」
  ふたりはケーキの断面をまじまじと見ている。
  「どないです? 同じでしたかいな」
  京焼の急須を持って、流がふたりの傍らに立った。
  「正直なとこ、味の記憶はほとんどないので、同じかどうか分かりません。けど、たしかにこんなんやったと思います」
  正幸が何度もうなずく。
  「わたしは少しずつ記憶が蘇よみがえって来ました。香り、味、そして何よりこの歯ざわりが、あのときのケーキと……」
  良枝が目を閉じた。
  「よろしおした」
  湯呑を取り替えて、流が緑茶を注いだ。
  「どうやって捜し当てられたんです?」
  正幸はハンカチで口を拭った。
  「同じ京都やさかい、すぐにわかるやろ、と最初は甘ぅみとったんですが、けっこう難問でしたわ」
  流が急須を持って微笑んだ。
  「そうでしょうな。わたしらもあの店の近所で訊いたんですが、どなたも消息をご存知や無のぅて」
  正幸が流に椅子を奨めた。
  「洋菓子商の組合にも入ってられなんだんで、その線からも手がかりが無ぅて。考えあぐねとったときに、ふと店の名前が気になりましてな」パイプ椅子に腰掛けて、流がノートをテーブルに置いた。
  「お父ちゃんはフランス語なんかさっぱりやさかい、うちが調べたんですよ」厨房から出て来て、こいしが流の後ろに立った。
  「お世話を掛けました」
  良枝がこいしに向かって、小さく会釈した。
  「『サン?ニュイ』というのは百夜という意味なんやそうです。百夜、変わった名前を付けはったなぁ、と思うて、ふと思い付いたんです。お店のあった場所は伏見の深草。深草と言うたら深草ふかくさの少しょう将しょう、そや〈百もも夜よ通い〉から名前を取らはったんやないかと」
  二基の供養塔が並ぶ写真を流がテーブルに置いた。
  「あの小野小町の伝説に出て来る話ですね。お能の〈通かよい小こ町まち〉とは結末がちょっと違いますけど」
  正幸が写真を取って、興味深げに見つめた。
  「〈通小町〉では小町も少将も仏縁を得て救われるという結末ですわな。あっちは舞台も洛らく北ほくになってますし、深草の店の名前には繋がらんでしょう」「でも、それは鴨川さんの推測なんでしょ?」良枝が怪け訝げんな顔付きで訊いた。
  「お父ちゃんの勘はたいてい当たりますねんよ」こいしが胸を張った。
  「たしかに推測に過ぎまへんでした」、苦笑して流が続ける。
  「切ない話ですわな。自分に惚ほれ込んだ深草少将に、百夜通うたら結婚してもええ、てなことを小野小町が言います。その言葉通りに通い詰めたんやが、九十九夜目に、雪の中で凍死してしもた、っちゅう話。大島聡子さんは、これを店の名前にしはった」流がしみじみと語った。
  「その大島聡子さんという名前は、どうやって知らはったんです?」正幸が前のめりになった。
  「さっきお話しした、百夜と九十九夜がヒントになったんですわ」流が京都のガイドブックをテーブルに広げた。
  「手がかりも見つからんと、途方に暮れとったときに、何気無ぅこの本を見てましてな、気になる店を見つけたんですわ。これ、『ツクモ?ニュイ』というケーキ屋」京都御ぎょ苑えんのガイド頁に添えられた、ショップガイドを流が指したが、ふたりはキョトンとした顔をしている。
  「ツクモは九十九やから、お店の名前は九十九夜になりますやん」こいしが口を挟んだ。
  「きっと何ぞ関係あるやろと思うて、訪ねてみましたんや。当たりでした。パティシエールて言うんですてな、女性の菓子職人。この『ツクモ?ニュイ』には大島かおりさんというパティシエールが居はりました。大島聡子さんのお孫さんです。ときどき『サン?ニュイ』を手て伝つどうてはったんやそうです」
  流が一葉の写真をテーブルに置いた。
  「そうそう、こんなおばあさんでした。上品な白髪で、穏やかなお顔をしてはった」良枝が写真を手に取った。
  「週に一、二度この店に翔君が来てたことを、かおりさんはよう覚えてはりました。聡子さんはえろう可愛かわいがってはったみたいです。おばあちゃんにはええ話し相手やったんでしょうな」
  流の言葉に正幸は目を潤ませた。
  「小さい子供やのに、聞き上手やった」
  「話したいこともようけあったやろに、わたしらの愚痴まで黙って聞いてくれてましたね」
  良枝が誰憚はばかることなく、洟はなをすすり上げた。
  「これはアメリカンタイプのケーキなんやそうですが、それには深草という土地柄が深ぅ関わって来ます」
  湿り気を払うように流が話を本筋に戻した。
  「アメリカのケーキやったんですか」
  正幸が訊いた。
  「戦後しばらく経ったころ、深草にはアメリカの進駐軍が駐留してました。今の『龍谷大学』に進駐軍の司令塔があったんやそうです。旧一号館図書館の二階ですわ。留学経験もあって、英語に堪能やった聡子さんは通訳として雇われはりました。そこで出会うた将校さんの家に招かれてホームメードケーキの作り方を教わらはった。最初は自宅でケーキ教室を開いてはったんですが、十年ほど前から、週に三日だけ小さな店をやってはった。通学路の横道にあったんで、翔君は目ざとく見つけたんでしょうな」在りし日の店の写真を流が見せた。
  「一番底に敷いてある生地をビスケットて言うんですて。小麦粉の生地にラードを足して、重曹で膨らませますねん」
  こいしが口を挟んだ。
  「このクリーム、ええ匂いがするんですけど」良枝が指でクリームを掬すくった。
  「桃の果汁を混ぜ込むんやそうです。元々、伏見は桃の名産地でしたさかい。伏見桃山という地名はその名残りですわな」
  「そういうことやったんですか」
  流の言葉に良枝が小さくうなずいた。
  「あとひとつで百。せっかく積み重ねてきて……。さぞや無念やったでしょうな」正幸がしんみりと言った。
  「たしかに満願成就とはならなんだけど、その想おもいは人の胸を打ちます。せやからこうして店の名前になって後世まで伝わるんです」流が正幸の目を真っ直ぐに見つめた。
  正幸は無言で流の視線を受け留めている。
  「熱いお茶でも淹いれましょか」
  息苦しさを感じてか、こいしが口を開いた。
  「一刻も早く供えてやりたいので、そろそろ……」正幸に目配せし、良枝が腰を浮かせた。
  「そうですな、早ぅ飾ってあげんと」
  流が立ち上がって厨房に急いだ。
  「この前のお食事代と合わせてお支払いを」
  正幸が財布を出した。
  「お気持ちに見合うた分を、こちらに振り込んでいただけますか」こいしがメモ書きを渡した。
  「分かりました」
  メモを折り畳んで、正幸が財布に仕舞った。
  「もうお作りになることはないやろと思いますが、一応レシピも入れておきます。大島聡子さんが、かおりさんに伝えはった覚書きです。それとこれ、大事なもんをあずかって来ました。翔君が聡子さんにプレゼントしはった絵です。聡子さんは額に入れて大事にしてられたみたいです」
  手提げの紙袋から小さな額を取り出して、流が正幸に渡した。
  「うちの〈桜川〉や。ほれ見てみ。よう描けてるわ」目を輝かせて、正幸は良枝に見せた。
  「ほんまや。売れ残ったんを、しょっちゅう持って帰って食べさせて」良枝が目を潤ませた。
  「本物のお菓子は持って来れへんけどと言うて、この絵をプレゼントなさったそうです」「うちの店の一番の名物で、お能の演目から〈桜川〉と名付けた焼き菓子です。伏見の御香宮さんには立派な能舞台があるんで、先々代から伝わってます」流の話に涙を流しながら、良枝が言葉を加えた。
  「しっかりお菓子屋さんの宣伝もしてはったんや」こいしが声をつまらせた。
  「何よりの宝です」
  正幸がそっと絵を紙袋に戻した。
  「ありがとうございました」
  傍らに立つ良枝が深々と頭を下げた。
  「冷えて来ましたな。今夜は降るかもしれまへんで」引き戸を開けて、流が白い息を吐いた。
  「ホワイトクリスマスになったらええのにね」駆け寄って来たひるねを、こいしが抱き上げた。
  「ひるねちゃん、元気でね」
  良枝がひるねの頭を撫でた。
  「明日、翔とご先祖さんに克也君のことを報告に行こうと思うてます」正幸が背筋を真っ直ぐに伸ばした。
  「よろしおしたな」
  流が繰り返した。
  「お世話になりました」
  ふたりは揃って頭を下げ、正面通を西に向かって歩き出した。
  「坂本さん」
  流が呼び止めると、ふたりは振り向いた。
  「〈家、家にあらず。継ぐをもて家とす〉。世ぜ阿あ弥みの言うとおりです」流の言葉を聞き終えて、正幸は胸の前で掌を合わせた。
  二人を見送って、こいしと流は店に戻る。名残りを惜しむかのように、ひるねがひと声鳴いた。
  「さっきの呪文みたいなんは何?」
  こいしがテーブルクロスを外した。
  「呪文やないがな。世阿弥の『風姿花伝』の最後に出て来る言葉や」「フランス語は強いけど、能はさっぱりや。どういう意味なん?」「家っちゅうもんは血筋だけで繋がるもんやない。その道を伝えるもんが居ってこそ、家と呼べる。ざっくり言うたらそんな話や」
  器を下げて、流が厨房の暖簾を潜った。
  「そんな難しい話、坂本さん分からはったやろか」こいしがテーブルを拭いた。
  「能の演目を菓銘にしてはるくらいやから、きっと分かってはる」流がカウンター越しに言った。
  「〈桜川〉てどんな話?」
  片付け終えて、こいしがカウンター席に腰を下ろした。
  「母ひとり、子ひとりが離れ離れになる哀かなしい話や」流は土鍋を火に掛けた。
  「それ聞いただけで泣きそうになるわ。そんな辛つらい話をお菓子の名前にしたらあかんやん」
  「最後は母子がちゃんと再会できるていう、ハッピーエンドやからええんや」ケーキを手にして、流が仏壇の前に座り、こいしは慌てて茶の間に駆け込んで、隣に正座した。
  「掬子のことやさかい、翔君を探しとるやろ」「翔ちゃんと一緒にケーキ食べてあげてな、お母ちゃん」こいしが手を合わせた。
  「三人でクリスマスケーキ食べたこと、いっぺんもなかったなぁ」流が仏壇に話し掛けた。
  「暮れは忙しいんや、て言うて、お父ちゃんが居いひんかっただけやん。クリスマスはいっつも、お母ちゃんとふたりやった」
  こいしがしんみりと言った。
  「ケーキはもうええさかい、酒くれて掬子が言うとる」「お父ちゃんが飲みたいだけと違うん」
  ふたりの泣き笑いする声が仏壇にこだました。
 

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