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山幸彦海幸彦
昔 々むかし、それはもうトコトン昔むかし、神話しんわの時代じだいのお話はなしで
す。
ニニギノミコトというややこしい [1] 名前なまえの神様かみさまがいらっしゃいました。
その二人ふたりの息子むすこさん、海幸彦うみゆきひこと山幸彦やまゆきひこという兄
弟きょうだいのお話はなしです。兄あにの海幸彦うみゆきひこはその名なのとおり海う
みで魚さかなを獲えるのが得意とくい、弟おとうとの山幸彦やまゆきひこは山やまで獣
けものを狩かるのが得意とくいでした。それぞれ海うみと山やまで獲物えものを捕とっ
て、暮くらしを立たて [2] ていました。
ある時とき、弟おとうとの山幸彦やまゆきひこが言いいます。「兄にいさん、どうもわ
しゃ、猪いのししとか追おっかけるのは飽あきてきたよ。偶たまには海うみに出でて、
爽さわやかな汐風しおかぜに吹ふかれて、漁りょうをしたいんじゃ。一日いちにちだけ
でええ。お互たがいの道具どうぐを交換こうかんするちゅうん [3] のは、どうじゃろ
う。」
「弟おとうとよ。バカを言いうな。人ひとには専門せんもんがあったことだ。山やまに
は山やまの、海うみには海うみのやり方かたがある。一日交換いちにちこうかん?そん
な甘あまい話はなしじゃない。怪我けがでもしたらどうする。」
「そんな固かたいこと言いわずに、気分転換きぶんてんかんですよ。人ひとには変化へ
んかも必要ひつようですよ。」
弟おとうとの山幸彦やまゆきひこがあまりしつこい [4] ので、兄あにの海幸彦うみゆきひ
こは渋々しぶしぶ [5] 承知しょうちしました。こうして二人ふたりは狩かりの道具どうぐ
を交換こうかんし、山幸彦やまゆきひこは海うみに、海幸彦うみゆきひこは山やまに行
いくという、変へんなことになりました。
さて、大喜おおよろこびで海うみに出でた弟おとうとの山幸彦やまゆきひこでしたが、
釣つりなんかしたことないですから、魚さかなはまったく釣つれません。その上兄うえ
あにに借かりた大切たいせつな釣針つりばりを、海うみに落おとっことしてしまいまし
た。ショボーンと兄あにの元もとに戻もどる山幸彦やまゆきひこ。聞 きくと、兄 あにも
まったく獲物 えものが獲 とれなかったということです 。人ひとには専門せんもんが
あったことだという兄あにの言葉ことばどおりでした。
そこで山幸彦やまゆきひこは釣針つりばりを落おとしたことを告つげます。兄あにはカ
ンカン [6] に怒おこります。お前まえがロクでもないことを考かんがえ付つくからだ、死
しんでも探さがして来こいと怒おこり狂くるいます。仕方しかたなく山幸彦やまゆきひ
こは自分じぶんの刀かたなを砕くだいて、釣針つりばりを500個こ作つくります。兄あに
はそれでも許ゆるしてくれません。次つぎに1000個こ作つくります。まだ許ゆるしてく
れません。「あの針はりじゃないとダメなんだ」と、頑固がんこです。
は、途方とほうに暮くれました [7] 。この広ひろい海うみからどうやってちっちゃな釣針
つりばりを見みつけ出だせというのか…。海岸かいがんで膝ひざを抱かかえてしゃがみ
こんで [8] いました。すると、ザバーと浪なみの底そこから、何なにか上あがってきま
す。見みると白髪しらがの老人ろうじんです。「私わたしはシオツチカミ。神かみの御
子おこよ、何なにを悩なやんでおる。」
山幸彦やまゆきひこは、シオツチカミと名乗なのる老人ろうじんに、兄あにから借かり
た大切たいせつな釣針つりばりを落おとしてしまったことを話はなします。「ふーむ、
それは困こまったのう。よし私わたしの言いうとおりにしなさい。私わたしが用意よう
いする舟ふねに乗のって海うみに漕こぎ出だす [9] のじゃ。後あとは、潮しおの流ながれ
に身みを任まかせる。すーと流ながれていって、海神わだつみの宮殿きゅうでんに着つ
くはずじゃ。その庭 にわに神聖 しんせいな桂 かつらの木 きがあるから、登 のぼるとよ
い。」と言 いいつつ、老人 ろうじんはまたザバーと [10] 海 うみの底 そこに消 きえてい
きました 。
見みると、竹たけの舟ふねが浮ういてます。隙間すきまなく編あんだ竹たけの舟ふね
で、水漏みずもれがしないように内側うちがわにニス [11] のようなものを塗ぬってありま
す。山幸彦やまゆきひこは半なかばヤケクソで竹たけの舟ふねに乗のり込こみ、老人ろ
うじんに言いわれた通とおり、潮しおの流ながれに身みを任まかせます。
三日みっか三み晩流ばんながされていきますと、遠とおくに魚さかなの鱗うろこが立た
ち並ならんだ [12] ようなキラキラ光ひかる宮殿きゅうでんが見みえてきました。島全体し
まぜんたいが宮殿きゅうでんなのです。さては老人ろうじんの言いったことは本当ほん
とうだったと、山幸彦やまゆきひこは島しまに舟ふねをつけます。宮殿きゅうでんの前
まえに確たしかに神聖しんせいっぽい木きがあります。登のぼります。登のぼって何な
にが起おこるかとワクワク待まっておりました。
すると宮殿きゅうでんのお姫ひめさま、トヨタマビメが木きの上うえにいる山幸彦やま
ゆきひこの姿すがたを見みつけます。宮殿きゅうでんの窓まどから見みていて、ま…な
んてカッコいい人ひとかしらと、ドキンとします。実じつは結構けっこうイケメンなの
です。トヨタマビメは使つかいのものを走はしらし [13] 、山幸彦やまゆきひこを招まねき
いれます。
こうして山幸彦やまゆきひことトヨタメビメは仲良なかよくなり、やがて夫婦ふうふに
なります。そしてトヨタマビメの父君ちちぎみの助たすけで海うみに沈しずんだ釣針つ
りばりも見みつけ出だし、兄あにに突つき返かえし [14] 、逆ぎゃくに兄あにより偉えらく
なり、出世しゅっせして、めでたしめでたしというお話はなしでした。
[1] 「ややこしい」,形容词。复杂,麻烦。
[2] 「暮らしを立てる」,谋生。
[3] 「ちゅうん」,古语。所谓的。
[4] 「しつこい」,形容词。纠缠不休,执拗。
[5] 「渋々」,副词。勉勉强强。
[6] 「カンカン」,副词。气得咬牙切齿。
[7] 「途方に暮れる」,不知所措,走投无路。
[8] 「しゃがみ込む」,动词。蹲下。
[9] 「漕ぎ出す」,动词。划出去。
[10] 「ザバーと」,副词。扑腾的响声。
[11] 「仮漆/ニス/ワニス」,名词。日本漆的简称。
[12] 「魚の鱗が立ち並ぶ」,波光粼粼。
[13] 「使いのものを走らす」,支使下人。
[14] 「突き返す」,动词。归还。
山幸彦和海幸彦
很 久以前,总之这是远古的神话时代发生的故事。
有一位名字很复杂的大神叫琼琼杵神。这是关于他的两个儿子——海幸彦和山幸彦兄弟俩
的故事。哥哥海幸彦,正如他的名字那样,擅长在海里捕鱼;而弟弟山幸彦则擅长在山里
打猎。他们各自在大海里和山上捕鱼打猎,以此维持生计。
有一天,弟弟山幸彦对哥哥说:“哥,这种追着野猪满山跑的日子,我已经过腻了。有时真
想出海去吹一吹海风,捕一捕鱼啊!哪怕就一天也行,我们互相交换工具怎么样?”
“弟弟啊,别说傻话了。每个人都有自己的专长,上山打猎有上山打猎的方法,下海捕鱼有
下海捕鱼的方法。交换一天?可别想得如此轻松,如果受伤了那可怎么办?”哥哥说。
“你不要那么死板嘛。我只是想换一下心情,人也是需要改变的啊。”弟弟恳求道。
禁不起弟弟山幸彦的死缠烂打,哥哥海幸彦终于勉强地答应了。就这样,他俩交换了捕猎
工具,山幸彦出海,海幸彦上山,进行了一次奇怪的角色调换。
弟弟山幸彦兴冲冲地出了海,可是他从未有过钓鱼之类的经验,所以一条鱼也没有钓到,
而且还把从哥哥那儿借来的珍贵的鱼钩掉到海里。垂头丧气的山幸彦回到了哥哥身边。一
打听,原来哥哥也没有捕到一只猎物。正如哥哥说的那样,每个人都有自己的专长。
于是,山幸彦向哥哥坦白了弄丢鱼钩的事。哥哥勃然大怒,“就因为你这家伙脑袋里净想一
些不靠谱的事才会弄成这样的。就算是死,你也得把鱼钩给我找回来!”没办法,山幸彦只
好把自己的猎刀打碎,做成500根鱼钩还给哥哥。即使这样,哥哥也不肯原谅他。接着他又
多做了1000根,但哥哥还是不领他的情,依然固执地说:“不是原来那根鱼钩就不行!”
山幸彦感到不知所措。在如此辽阔的大海里面怎能找到那么小的一根鱼钩呢?他苦恼得抱
膝蹲在海边。这时,只听见“哗啦”一声,从海浪里出现了什么东西。仔细一看,原来是一
个头发花白的老人。“我是盐椎神。神的孩子呀!你在为什么而苦恼呢?”老人问他。
山幸彦把自己弄丢了从哥哥那里借来的鱼钩这件事情告诉了这位自称是盐椎神的老
人。“嗯……的确很难办啊。就按照我说的那样去做吧。你坐上我为你准备的小船,然后划
着它出海。之后顺着海水一直向前漂流,应该就能到海龙王的宫殿了。那的院子里有棵神
圣的桂花树,你只要爬上去就好了。”说完老人就又“哗啦”一声消失在海底。
山幸彦一看,海面上果然漂浮着一条竹船。竹船扎得十分结实,为了防止进水,船的内侧
还涂上了清漆。于是他想着死马当活马医,干脆坐上竹船,像老人说的那样顺着海水漂流
而去。
经过3天3夜的漂流,他终于远远地看到了鳞次栉比、闪闪发光的宫殿。整个岛就是一个大
宫殿。看来老人的话果然是真的,山幸彦划着小船在岛上靠了岸。宫殿前面确实有一棵看
起来很神圣的树。他二话不说就向上爬,边爬边忐忑不安地想:爬上去之后,会发生什么
事儿呢?
就在这时,宫殿里的丰玉公主发现了树上的山幸彦。她从宫里的窗口往外看,啊!怎么会
有一个如此英俊的男子呢?公主心里如小鹿乱撞:他真是太帅了!丰玉公主连忙派出下
人,把他请了进来。
就这样,山幸彦和丰玉公主日久生情,不久就结为夫妻。并且在岳父的帮助下,他也找到
了沉到海底里的鱼钩,把它还给了哥哥。最后弟弟反而比哥哥更有出息,出人头地,这真
是一个可喜可贺的故事啊!
语法详解
(1)まったく~ない
表示全面否定。相当于“一点也不……”“完全不……”“根本不……”“丝毫
不……”
* 最近まったく雨が降っていない。
最近一滴雨也没下。
* 人が全く訪ねて来ない。
没有一个人来。
* あの映画がまったく面白くなかったです。
那部电影一点儿意思也没有。
(1)動詞の連用形+つつ
表示两个动作同时进行。相当于“一面……一面……”“一边……一边……”
* お酒を飲みつつ談じる。
且饮且谈。
* 成功を期しつつ情勢の変化を見守る。
在期待成功的同时,注视局势的发展。
小知识
シオツチノオジ
シオツチノオジ(シホツチノヲヂ)は、日本神話に登場する神であり塩
竈明神とも言う。『古事記』では塩椎神(しおつちのかみ)、『日本書
紀』では塩土老翁·塩筒老翁と表記する。潮流を司る神、航海の神であ
る。『記紀』神話におけるシオツチノオジは、登場人物に情報を提供
し、とるべき行動を示すという重要な役割を持っている。海に関する神
が知恵を授けるという説話には、ギリシア神話などに登場する「海の老
人」との類似が見られる。また、シオツチノオジは製塩の神としても信
仰されている。シオツチノオジを祀る神社の総本社である鹽竈神社(宮
城県塩竈市)の社伝では、武甕槌神と経津主神は、塩土老翁の先導で諸
国を平定した後に塩竈にやってきたとする。武甕槌神と経津主神はすぐ
に去って行くが塩土老翁はこの地にとどまり、人々に漁業や製塩法を教
えたという。海の神、製塩の神、呪術·予言の神などとして信仰されてお
り、各地の塩釜神社で祀られている。
盐椎神
盐椎神即日本神话中出现的盐灶明神。《古事记》称之为盐椎神,《日本
书纪》则写作盐土老翁,盐筒老翁,是负责管理海潮流动和航海活动的海
洋之神。《记纪》神话中,盐椎神担任着为出场人物提供信息、提示其必
须采取何种行动的重要角色。从与海有关的神授予人类智慧这一点看,与
希腊神话中出现的“海的老人”类似。另外,盐椎神也被日本人奉为制盐之
神。据供奉盐椎神的总社盐灶神社(宫城县盐灶市)的社传记载,武瓮槌
神和经津主神在盐土老翁的带领下,平定诸国后来到盐灶。武瓮槌神和经
津主神随后就离开了,而盐土老翁则定居此处,教授当地人渔业和制盐
法,被日本人奉为海神、制盐之神、巫术与预言之神等,供奉在日本各地
的盐灶神社中。