銭州(ぜにす) (東京都神こう津づ島村)
魚が大量に獲れ、銭が稼げる岩礁「銭州」
伊豆諸島の線上、北緯三三度五七分、東経一三八度五〇分付近に存在する大礁から海面上に突き出た岩礁を、「銭州」と呼ぶ。さらに、水産関係者は岩礁群を含む大礁を総称して、銭州と呼ぶこともある。
このあたりは絶好の漁場とされ、カツオなどの回遊魚をはじめ、カサゴ、メジナなどの魚類が豊富だ。また、春にはマサバの産卵場となることでも知られている。
「銭州」という地名も、こうした事実と深く関わっている。記録によれば、銭州は一八七五(明治八)年に静岡県の稲葉半七氏によって発見された。それ以降、静岡県沿岸の漁船は、「あそこに行けばいくらでも魚が獲れて、銭が稼げる」というので、たくさん船を出すようになった。そこから、ここを銭州と呼ぶようになったとされている。
ちなみに、御お前まえ崎ざき沖には「金きん州す」という地名もあるが、これもまた、同様の理由で付けられた名前らしい。どちらも漁業関係者の素直な気持ちから誕生した地名といえよう。