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ろくろ首
昔 々むかし、旅たびから旅たびを続つづける一人ひとりの男おとこがいました。ある日ひの事こと、日ひが暮くれてきたので、男おとこは浜松はままつの近ちかくにある村むらの宿屋やどやに泊とまる事ことにしました。その夜よるはあいにく、泊とまり客きゃくがたくさんいました。そこで男おとこは美うつくしい女おんなの旅人たびびとと一緒いっしょに、一ひとつの部屋へやの真まん中なかに屏風びょうぶを立たてて、一夜いちやを過すごす事ことになりました。
夏なつの夜よるだったので、いつまで経たっても蒸むし暑あつく、眠ねむたくてもなかなか眠ねむれません。男おとこは夜深よふけになって、やっと、うとうとしはじめました。屏風びょうぶの向むこうで寝ねている女おんなの人ひとも、やはり眠ねむれないのでしょうか。いつまでもモゾモゾ [1] していましたが、そのうちに急きゅうに起おき上あがる気配けはいがしました。「はて。便所 べんじょにでも行 いくのかな ?」男おとこはそう思おもいましたが、けれども、隣となりはすぐに静しずかになりました。
ところがしばらくすると、屏風びょうぶの向むこう側がわから、生温なまあたたかい [2]
風かぜが吹ふいてきました。そして女おんなの人ひとの白しろい顔かおが屏風びょうぶの上うえに伸のび上あがって、フワフワと部屋へやの中なかを動うごき始はじめたのです。男おとこはびっくりして、ごくりと [3] 息を飲のみ込こみました。「さては、隣 となりの女 おんなはろくろ首 くびだな 。」
男おとこは寝ねたふりをしながら、暗くらい部屋へやの中なかを動うごき回まわる女おんなの白しろい首くびを見みていました。女おんなの首くびは男おとこの足元あしもとの方ほうへ行いったかと思おもうと、屏風びょうぶの上うえを伝つたわって、天井てんじょうの方ほうへも登のぼっていきます。細ほそくなった白しろい首くびが、クネクネと伸のび [4] ていきます。
男おとこはろくろ首くびが少すこしでも悪わるさをしたら、飛とびかかっていって長ながい首くびを引ひきちぎってやろうと思おもいましたが、けれどもろくろ首くびは何なにも悪わるさをしません。ただフワフワと、楽たのしそうに部屋へやの中なかを動うごき回まわっているだけでした。
だけどそのうちに、女おんなの白しろい首くびは半はん分ぶん開あいた雨戸あまどの間あいだから、するりと外そとへ抜ぬけ出だしていきました。「はて。どこへ行いくのだろう?」どうせ眠ねむれないので、男おとこは頭あたまを上あげると、ろくろ首くびが伸のびて行いく後あとを追おって、雨戸あまどの間あいだから外そとへ出でて行いきました。
美うつくしいろくろ首くびは宿屋やどやの前まえの通とおりを横切よこぎって、お地蔵じぞうさんの建たっている林はやしの中なかへ入はいって行いきました。そして林はやしの奥おくにある池いけの畔ほとりまでフワフワ伸のびて行いくと、蛇へびのように長ながい舌したを出だして、池いけの水みずをペロペロと舐なめ [5] 始はじめたのです。
「なんだ、水みずを探さがしていたのか。喉のどが渇かわいていたので、こんな所ところへ水みずを飲のみに来きたのだな。そう言いえば、おれも喉のどが渇かわいたな。」そっと後あとをつけてきた男おとこは、木きの陰かげに隠かくれてゴクリと喉のどをならし [6] ました。
その時とき、水みずを飲のんでいたろくろ首くびが男おとこの方ほうを向むいて、ニヤリと笑わらったのです。「しまった。見みつかったかもしれん。」男おとこは急いそいで宿屋やどやへ戻もどり、また雨戸あまどの間あいだから部屋へやの中なかに入はいると、なにくわぬ顔かおをして [7] 眠ねむってしまいました。
??
さて、次つぎの日ひの朝あさの事ことです。男おとこより早はやく目めを覚さました女おんなが、屏風びょうぶの陰かげから男おとこに声こえをかけてきました。「昨日きのうの晩ばんは、ずいぶん蒸むし暑あつかったですねえ。よく眠ねむれましたか?」「まったく。本当ほんとうに蒸むし暑あつかったですなあ。」男おとこはそう答こたえながら布団ふとんを片付かたづけて、屏風びょうぶを取とり除のぞきました。女おんなの人ひとは鏡かがみに向むかって、髪かみの毛けを整ととのえていました。
「暑あつかったけれど、昨日きのうは疲つかれていたのか、わたしはぐっすりと眠ねむって、夢一ゆめひとつ見みませんでした。」男おとこはわざと、とぼけた [8] 事ことを言いいました。「あら、そうでしょうか?あなた様さまは不思議ふしぎな事ことをなさいましたが…」女おんなの人ひとは口元くちもとに手てを当あてて、笑わらいを抑おさえながら言いいました。
「はて。わたしが不思議ふしぎな事ことを?それは、どう言いう事ことですか?不思議ふしぎな事ことをしたのは、寧むしろあなたではないですか。」男おとこが少すこし怖こわい顔かおで言いい返かえすと、「あら、わたしが不思議ふしぎな事こと?わたしが一体いったい、何なにをしました?」と、言いうのです。
「それなら、言いってやりましょう。あなたは美うつくしい顔かおをしているが、実じつはろくろ首くびで、この部屋へやの雨戸あまどから抜ぬけ出だして、向むかいの林はやしの中なかにある池いけへ水みずを飲のみに行いったのではないですか。」すると女おんなの人ひとが、ケラケラと笑わらいながら言いいました。「あなた様さまは、ご自分じぶんの事ことに気きづいてないのですか?」
「何なにをです!」「この部屋へやは、二階にかいですよ。」「…あっ!」「ようやく気きがついたのですね。あなた様さまが首くびをどんどんと長ながく伸のばして、ずっとわたしの後あとをつけて来きた事ことを。夜中よなかにこっそり女おんなの後あとをつけるなんて、あまり良いいご趣味しゅみとは言いえませんね。」「…」男おとこはこの時ときはじめて、自分じぶんもろくろ首くびである事ことに気きづきました。
女おんなのろくろ首くびはニコニコ笑わらいながら、男おとこのろくろ首くびに言いいました。「ここでこうして出会であったのも何なにかの縁えん。どうです。似にた者同士ものどうし、これから旅たびを続つづけませんか?」「…いえ、せっかくの申もうし出で [9] ですが、」男おとこは急いそいで旅たびの支度したくをすると、どこへともなく去さって行いったという事ことです。
[1] 「モゾモゾ」,副词、サ变动词。坐卧不安。
[2] 「生暖かい」,形容词。有点暖和,微温。
[3] 「ごくりと」,副词。咕嘟地喝,一口气地。
[4] 「クネクネと伸びる」,弯弯曲曲地延伸。
[5] 「ペロペロと舐める」,舔。
[6] 「のどをならす」,馋得直咽口水,指渴望得到(某种东西)。
[7] 「なにくわぬ顔をする」,若无其事的面孔,佯装不知的样子。
[8] 「とぼける」,动词。假装糊涂。
[9] 「申し出」,申请,要求,希望,意见。
长脖子妖怪
很 久以前,有一位四处漂泊流浪的男子。有一天,太阳已下山了,男子决定在滨松(静冈县西南部)附近的一个村子的旅馆过夜。真不凑巧,那天夜晚留宿的旅客特别多。因此,这男子不得不和一个漂亮的女住客共用一间房,中间用屏风把房间隔开了。
这是一个闷热的夏夜,即使很困,也热得人难以入睡。直至深夜,男子才终于开始迷迷糊糊犯困了。躺在屏风对面的那个女人,大概也是难以入睡吧,她不停地在那里辗转反侧。
此时,那男子感觉到她突然起身。他心想:她是去上厕所吧?可对面却突然安静下来。
过了一会儿,从屏风对面吹来了一阵暖风。只见那女人白皙的脸伸到了屏风上面,开始轻飘飘地在屋里晃动。这男子见状大吃一惊,倒吸了一口凉气。他心想:原来隔壁的女子是一个长脖子妖怪呐!
这男子一边假装睡着,一边看着那女人白皙的长脖子在黑暗的屋里四处转动。眼看那女人的长脖子就要伸到自己的脚底下了,忽然间它又转到屏风的上方,往天花板的方向伸去。
那细长的白皙脖子蜿蜒地不停往上伸啊伸。
这男子心想,要是这个长脖女妖使坏的话,我就跳过去把它的长脖子砍断。但是长脖女妖什么坏事都没干,只是轻飘飘地似乎很高兴地在屋里四处晃动。
然而过了一会儿,那女人白皙的长脖子从半开的雨窗之间,“嗖”地一下往外伸了出去。这男的心想:哎?这是要去哪儿?反正也睡不着,这男子便抬起头,顺着长脖女妖伸展的踪迹,也从窗户钻出去了。
那美丽白皙的长脖女妖横穿过旅馆门前的马路,进入了安放着地藏菩萨的树林中。然后又轻飘飘地伸展到林中深处的一个池子边,伸出了像蛇一样的长舌,“吧嗒吧嗒”地开始舔池塘里的水。
悄悄地跟在长脖女妖后面的男子自言自语道:“哎呀!原来她是在找水呀。因为口渴,才跑到这种地方来喝水呀。说起来,我也有点口渴了。”他躲在树阴下,咽了下口水。
这时,正在喝水的长脖女妖突然朝着男子的方向微微一笑。“糟啦!可能被她发现了。”男子心想。他急忙回到旅馆,从半开的遮雨窗进了屋子,装作若无其事的样子睡下了。
第二天早上,比男子早起的长脖女妖隔着屏风跟他搭话:“昨晚真是闷热呀!你睡得可好?”“是啊!真是太闷热了!”这男子一边回答一边叠起被褥,然后他挪开屏风。那女人正对着镜子梳理头发。
这男子故作糊涂地说:“虽然很热,但因昨天太劳累了,所以我睡得挺香的,连梦都没做呢。”“噢,是吗?你没有做什么奇怪的事吗?”这女人用手遮着嘴,忍着笑问他。
这男子略带惊恐地反问:“什么?我做了奇怪的事?你这是什么意思?倒是你自己做了一些奇怪的事情吧?”“啊?我做了奇怪的事?我究竟做了什么?”女子问道。
这男子告诉她说:“那我就告诉你吧。你虽然长了一张漂亮的脸蛋,但实际上是一个长脖子妖怪,你不是把头从遮雨窗中间伸出去,伸到对面树林里的池子去喝水了吗?”听了他的话,这女人“咯咯”地大笑起来:“难道你没有察觉到自己做的事吗?”
男子问:“怎么啦?”“这个房间是二层楼哦。”女子答道。“……啊!”男子听了倒吸一口凉气。
这女人继续说:“你终于觉察到了吧?是您伸着那长长的脖子,一直跟在我后面,半夜三更悄悄地跟在一个女人后面,可以说不是什么好嗜好吧?”“这……”男子无言以对。他这才察觉自己也是长脖子妖怪。
长脖女妖一边微笑,一边对男子说:“在这里我们这样相遇,也算是一种缘分吧?怎么样?
同路人。今后一起结伴而行好吗?”“……不!不啦!承蒙你的好意,但还是算了吧。”说罢,这男子就急忙准备出发。据说后来他不知去向。
语法详解
(1)はて(疑問詞/感嘆詞)
表示疑问或者感叹的意思。相当于“咳”“哎”“嗯”“哎呀”。
* はて、何だろう。
咳,是什么呢?
* はて、どこへ置いたのかな。
哎呀,放在哪儿了呢?
* はて、おかしいぞ。
咦,怪了。
(2)さては(感嘆詞)
表示“这样说来……”“那么一定是……”“看起来……”的意思。
* さては、ぼくを騙したな。
那么一定是他骗我啦。
* さては、嘘をついたな。
看起来一定是他说谎了。
小知识
ろくろ首
夜中に首を伸ばして行灯の灯油をなめるとか、首が飛行するなどといわれる怪異現象。主として成人したばかりの娘や女中で、心の緩んだときに伸びるとか、食や水を求めるために伸びるのだとか、離魂病の一種だなどといわれている。近世の随筆類によると、飛頭蛮という国の人はみなろくろ首で、首に赤い痕があり、夜は両耳を翼として飛んで行って虫を食い、明け方には帰ってきてもとのようになるという。中国の『捜神記』には、呉将軍の召使いだった下女の首が、夜ごとに飛び出した話があるから、首が飛行する話は中国伝来のものであろう。諺には、すぐ詰まることのたとえに「ろくろ首がきらずを食う」、長い物事のたとえに「ろくろの反吐(へど)」などという。
长脖子妖怪
夜里伸长了脖子去舔油灯的灯油,或是脑袋会飞的怪异现象。主要发生在刚成人的女孩或是女佣人心情舒畅,或是找东西吃、找水喝的时候,是梦游症的一种。据近世的随笔记载,有一个叫飞头蛮的国家,那里的人都是长脖子,脖子上有红色的痕迹,一到夜里,双耳就变成翅膀飞出去吃虫子,到了天亮又飞回来。中国的《搜神记》中,有关于吴将军的仆女,每到夜里就伸长脖子飞出去的故事。由此看来,日本的会飞的长脖子的传说大概来源于中国吧。在日语中将突然噎住比喻为“长脖子吃了豆腐渣”,将拖泥带水比喻为“长脖子的呕吐物”。