狼森(おいのもり) (青森県弘前市)
東北地方に「狼」の字の付く地名が多いワケ
青森県には弘ひろ前さき市内の「狼森」のほか、狼倉や狼沢などがあり、秋田県には青森にあるものと同じ狼沢と書いて「おいぬのさわ」「おいさわ」と読ませるところが二か所、岩手県にも同じ文字で「おいぬさわ」など、「狼」の字の付く地名がみられる。また、宮城県にも狼坂、狼塚といった場所があるようだ。
青森県には弘ひろ前さき市内の「狼森」のほか、狼倉や狼沢などがあり、秋田県には青森にあるものと同じ狼沢と書いて「おいぬのさわ」「おいさわ」と読ませるところが二か所、岩手県にも同じ文字で「おいぬさわ」など、「狼」の字の付く地名がみられる。また、宮城県にも狼坂、狼塚といった場所があるようだ。
ここに挙げた狼の字を使った東北各県の地名はほんの一部でしかなく、このほかにも探せば数多く見つかる。ただ、たいていの場所は、狼の字を「おいぬ」「おいの」「おい」と読んでいる。これは、かつてニホンァ ~ミのことを「お犬」と呼んでいたことの名な残ごりの呼称である。
岩手県遠とお野の地方に伝わる伝承をまとめた柳やなぎ田た國くに男お氏の『遠野物語』には、精霊やモノノケとともに「御犬」がたびたび登場するが、これはニホンァ ~ミのことを指している。
これらのことは、遠野地方をはじめ、東北地方のあちこちにァ ~ミが生息していたことを裏付けるものといえよう。
古代の信仰では、動物も精霊と並んで聖なるものとして扱われることが多かった。ァ-カミもその対象であり、出没する場所のあたりを畏敬の念を込めて「おいぬ」の字の付く地名にしたようだ。
そして、狼につづく字に、森や沢のほかにも久保(窪)、淵といった、いかにもァ ~ミにふさわしい場所を意味する字が使われている点も、ァ ~ミの出没場所を示していることの裏付けといえる。