小岩井（こいわい） （岩手県雫石町·滝沢村）
ヨーロッパ農法をとり入れた三人の苗字の最初の一文字 岩手県の雫しずく石いし町と滝沢村にまたがる小岩井地区は、小岩井農場のちょうど玄関口の場所にあたるが、「小岩井」という地名は、この農場と深い関わりをもっている。
小岩井農場は岩手山の南麓にあり、約三〇〇〇ヘクタールの広さを誇る大農場である。
この農場がある場所は、かつて、火山灰に覆われた荒地だった。しかし、明治時代に東北本線が盛岡まで開通するにあたり、鉄道庁長官の井上勝氏がこの地を訪れ、荒地を開墾してヨーロッパ農法に基づいた本格的な農場を建設したいと考えた。
そのとき、これに賛同したのが日本鉄道会社副社長の小野義真氏と、三菱社社長の岩崎弥之助氏である。三人は協力して準備を進め、一八九一（明治二十四）年に開墾をはじめた。土壌を改良し、湿地の暗あん渠きよ排水に取り組み、防風?防雪林をつくってスギ·アカマツ·カラマツを植林し、乳牛を輸入して繁殖と育成に取り組んだのである。
こうして誕生した農場には、創設者となった三人の苗字の最初の一文字ずつを取って、「小岩井」という名前が付けられたのである。
現在、小岩井農場では生産農場を原点に、農林畜産関連の七つの複合的事業を展開している。全国的に知名度の高い牧場になったことにより、正式名称が「風林」「大清水」というこの地区は、いまでは小岩井という通称がすっかり定着しているようだ。
