鳥取(とつとり) (鳥取県鳥取市)
朝廷直属の白鳥捕獲集団「鳥取部」に由来
中国地方の北東部に位置する鳥取県は、東西約一二〇キロ、南北約二〇~五〇キロのやや細長い県。北には鳥取砂丘などがある白はく砂しや青せい松しようの海岸線がつづき、南には大だい山せんなどの山々が連なっている。県庁所在地も、県名と同じ鳥取市だ。
ところで、この「鳥取」というのは、文字どおり鳥に関係した地名だ。『古事記』には、大和朝廷が諸国に鳥を捕らえさせ、これを税として納めるように命じたという記述がある。
古代の鳥取にも、大和朝廷直属の職業集団がいて、白鳥を捕獲して朝廷に献上していたと伝えられる。彼らはかつて、湿地帯で狩猟生活をしていたが、その後、大和朝廷に組み込まれ、当時は「鳥と取とり部べ」と呼ばれていた。つまり、その名前が県名や市名として現在も残っているというわけだ。鳥取部は全国数か所にみられたが、いまも地名として残っているのはここだけである。
なお、鳥取部は白鳥だけではなく、あらゆる鳥を捕獲していたともいわれる。実際、朝廷に献上された鳥は、肉は食用、羽は弓矢の素材に使うなどしていたらしい。ただし、当時はこれとはべつに鷹たか狩かり部べという人たちもいたので、鳥取部は鷹などの猛もう禽きん類は捕獲しなかったという説もあるようだ。