狸小路(たぬきこうじ) (北海道札幌市)
札幌の繁華街「すすきの」に、果たして狸は出没したのか?
北海道?札幌市の中心商店街としてにぎわっているのが、南二条通りと南三条通りのあいだにあるアーケード街、「狸小路」だ。
かつて、開拓使によって、函館商人の移住が奨励されたことから商店街が誕生し、明治になると百貨店の前身である勧かん工こう場ばが設置されて、狸小路発祥の地となった。
現在では、郷土料理店やみやげもの屋、衣料品店などが集まり、いつも大勢の人々が行き交っている。
ところで、この狸小路という地名だが、意外にも、動物のタヌキから取ったものではない。たしかに、狸小路ができた明治初期には、このあたりにはヒグマやァ ~ミなどとともに、タヌキも出没していたという。だが、それと地名はまったく関係がないのだ。
では、狸小路という名前の由来は、いったい何なのだろうかといえば、じつはこれ、人間なのだ。
狸小路の南には全国有数の繁華街「すすきの」があるが、ここには明治時代に公認の遊郭があった。ところが、遊興費が高かったことなどから、そのうちにすすきのの遊郭よりも安い私し娼しようたちが、街頭で客引きをするようになったのである。
私娼たちは、首に濃いおしろいを塗っていたために「白首」と呼ばれ、彼女たちの本拠地は「白首小路」とも呼ばれた。そして、彼女たちが夜な夜な男をたぶらかす手法は、タヌキが人を化かすよりも巧みだということで、白首小路はいつのまにか、狸小路と呼ばれるようになったのである。
地名にまで残るのだから、白首たちの手て練れん手て管くだは相当のものだったに違いない。これにはきっと、タヌキもかたなしといったところだろうか……。