釈迦浜(しやかはま) (福井県高浜町)
行基がつくった薬師如来像が流れ着いた地
若狭湾に、「釈迦浜」という場所がある。ただ、浜といっても、対馬暖流がそのまましぶきを打ち上げている岩場である。
いったん海流に乗って入ってきた物はなかなか外に出ていけない構造になっているので、世界中から漂流物が集まるという奇妙な場所だ。
それだけに、釈迦浜というありがたい地名も、なんとなくうなずけるのだが、由来はまた別にある。
その昔、天てん平ぴよう年間(七二九~七四九年)に、釈迦浜に光を放つ一体の仏像が打ち上げられたが、その仏像はかの高僧、行ぎよう基き作の薬師如来像であったという。
そして、ある日のこと、村人の夢に、その仏像は温泉を守る仏であるというお告げがあり、その後、ここに温泉が出たそうだ。
現在、この釈迦浜には温泉はないのだが、ヨットハーバーなどに使われている。
ちなみに、作家である水上勉氏の小説には、この浜の地名の由来について書かれているものに『釈迦浜心中』という作品がある。