キタ・ミナミ (大阪府大阪市)
大阪の「キタ」と「ミナミ」の境界はいったいどこか?
大阪を代表する繁華街が「キタ」と「ミナミ」であるが、この読み方、とくに〝大阪初心者〟にとっては、なんとなく「?」マークが頭に浮かんでしまう。
たとえば東京なら、表参道、六本木というように、町や駅の名前で呼びあらわす。ごくかぎられた地域を指すにしても、博多の「中洲」や札幌の「すすきの」といった地名が一般的だ。
しかし、大阪にはキタやミナミと呼ばれる街は実際になく、そんな駅名もないのに、大阪人にはどこを指すのかすぐわかるのである。
じつはこれ、ただ単純に、大阪市の北に位置する、南に位置するというところから生まれた使い分けだ。北はJR大阪駅を中心とした梅田地区、南は道頓堀を中心とした灘なん波ば地区である。とはいえ、これはあくまで大阪人ならではの感覚による通称だから、キタとミナミを結ぶ御み堂どう筋すじの、「ここが境目」というところはない。
歴史的に見てみると、ミナミには江戸時代に道頓堀川が開かれて、両岸に遊興街が広がっていった。そのなかの遊里が「南地」と呼ばれていたというから、ミナミの語源はこのあたりからのようだ。
一方のキタのほうは、道頓堀川に遅れて曽根崎川の改修によって広がった地域だ。ここに近松門左衛門の心中物でも知られる曽根崎という遊里があったが、川の改修で北へ移動させられ、「北の新地」と呼ばれるようになる。これが「キタ」の語源ともいえるようだ。