五十首歌たてまつりし時
4 かきくらしなほふるさとの雪のうちに跡こそ見えね春は来にけり
宮内卿
【通釈】
4 あたりを暗くしてなおも雪の降る古里の、その雪の中に足跡は見えないけれども、春はやって来たのだなあ。○五十首歌 建仁元年(一二〇一)二月老若五十首歌合の五十首。○かきくらし 「かきくらし雪は降りつつしかすがにわが家の園に鶯ぞ鳴く」(後撰・春上・読人しらず)。○ふるさと 雪の降る古里。古里は一と同じく、吉野の里などを想定する。○跡 人の足跡と擬人化された春の足跡を兼ねていう。「春無 跡至争尋得」(新撰朗詠集・立春・藤原篤茂)、守覚法親王の「年暮れしなごりの雪や惜しからむ跡だにつけで春は来にけり」(正治二年院初度百首)が先行する。