堀河院御時、百首歌たてまつりけるに、残りの雪の心をよみ侍りける
10 春日野の下もえわたる草の上につれなく見ゆる春の淡あは雪
権中納言国信
【通釈】
10 春日野の一面に萌え出ている草の上にそしらぬ様子で消え残っている春の淡雪。○堀河院 堀河天皇 作者。○百首歌 堀河百首。○残りの雪 歌題。「残雪」とも書き、春になっても消え残っている雪、また春に降る雪を歌う。○春日野 大和国の歌枕。現在の奈良市で、若草山や三笠山の西麓に続く台地。春日大社のある地は春日野町。○下もえわたる草 雪の下に一面に萌え出る草。恋心が燃え続ける意の「燃えわたる」を響かせる。○淡雪 春に降る解けやすい雪。▽春日野の下の若草と上の残雪を対比させ、草と雪を擬人化し、恋愛関係にあるように取りなした。百人秀歌に採られた。定家十体で有一節様の例歌とする。