崇徳院に百首歌たてまつりける時、春の歌
13 若菜摘む袖とぞ見ゆる春日野の飛火の野辺の雪のむら消え
前参議教長
【通釈】
13 若菜を摘む人の袖と見えるよ、春日野の飛火野の野辺の雪のむら消えは。本歌「春日野の若菜摘みにや白妙の袖ふりはへて人の行くらむ」(古今・春上・紀貫之)。○崇徳院崇徳天皇 作者。○百首歌 久安六年(一一五〇)百首。○飛火の野辺 飛火野は春日野の一部、春日山の裾野のあたり。また春日野の異称。「春日野の飛火の野守出でて見よ今幾日(いくか)ありて若菜摘みてむ」(古今・春上・読人しらず)。○雪のむら消え 雪がむらになって消え残っていること。和泉式部に作例のある句。これを若菜を摘む人の白い袖に見立てた。