日吉社によみてたてまつりける、子日の歌
16 さざ波や志賀の浜松ふりにけりたが代に引ける子の日なるらむ
皇太后宮大夫俊成
【通釈】
16 志賀の浜辺の松は老木となってしまったなあ。いつの御代に引いた子の日の松が根づいたものなのだろうか。○日吉社 比叡山の東麓、現在の滋賀県大津市坂本にある日吉大社。山王二十一社、山王七社などと呼ばれる。近江国の歌枕。この歌は文治六年(一一九〇)三月五社百首のうち、日吉社奉納の詠。○子日 歌題。正月の初めの子の日、野外で若菜を摘み、小松を根曳きし、長寿を願った行事。○さざ波や 「志賀」の枕詞。○志賀の浜松 琵琶湖の西南岸志賀の浜に生えている松。「志賀」は近江国の歌枕。大津市の唐崎から柳が崎一帯の湖岸。▽日吉社奉納の歌なので、柿本人麻呂が歌った近江の大津の宮の昔などに思いを馳せて詠む。