21 今さらに雪降らめやもかげろふのもゆる春はる日ひとなりにしものを\読人しらず
【通釈】
21 今さら雪は降りはしないだろう。陽炎(かげろう)の燃える春の日となったのに。○雪降らめやも 「やも」は反語。○かげろふ 陽炎。地表から立ち昇る水蒸気のために光が屈折して、物の形がゆらめいて見える現象。古くは「かぎろひ」といった。炎が燃えるように揺れるので、「もゆ」という。○春日 春の日。▽原歌は「今さらに雪降らめやもかぎろひの燃ゆる春へとなりにしものを」(万葉?巻一〇?一八三五?作者未詳)。