煙島(けむりじま) (兵庫県南あわじ市)
「煙」は、源氏に敗れた平敦盛の遺体を火葬した煙
瀬戸内の淡路島付近から周防すおう灘なだにかけては、源平の戦いにまつわる逸話が残されている地域だ。陸地に一ノ谷、海域に屋島、壇ノ浦といった源平の武将たちの勇ましい活躍、哀しい最さい期ごなどが伝えられている。
淡路島南方の海上にある「煙島」も、そのなかの一つで、『平家物語』で語られる笛の名手で若き武将、平敦あつ盛もりにゆかりのある島だ。
一ノ谷の戦いで源氏に敗れた平氏は、屋島に逃れる。しかし、敦盛は討たれてしまう。その敦盛の遺体を火葬にしたのがこの島だったといい、立ち上る煙に彼を惜しんで、煙島と命名したのだという。
いまでも煙島には、神話時代からの伝承をもつ小さな社殿のほかに、敦盛の首塚もある。島への定期便はないが、伝説を知って訪れる人もいる。
そんな人たちのあいだでは、首塚に触れると呪われると、ひそかにささやかれているそうだ。
また、異説として、煙はこの島から上がる狼煙のろしのことだともいうが、これは海路としても漁労者の操業にしても、この島が要衝だったという歴史を示している。