第17課 ごみ処理費と国防費が同額とは
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日本全国でごみ処理に毎年3兆円がかかっていますが、これは日本の防衛予算とほぼ同額です。ごみとの闘いに国防費と同額が使われているとはちょっと信じがたい話ですが、本当の話です。しかも、ごみ処理場建設をめぐる紛争や不法投棄の発覚などのトラブルが日本各地で起こっていますが、いったいいつからこんなにごみ問題が深刻になったのでしょうか。
江戸時代にさかのぼれば、住宅、生活用品の材料は、稲(藁)、木材や竹、紙が主でしたから、それらをリサイクルさせながら、一種の理想的な資源循環型社会を築いていました。明治以後でも、衣類は使って古くなると赤ちゃんのおしめとなり、廃材は風呂の燃料、人や家畜の排泄物や灰は農地に肥料として撒かれたので、ごみはないに等しかったのです。
それが変わり始めたのは、「もはや戦後ではない」と言われた1956年あたりからです。洗濯機、冷蔵庫、掃除機などの電化製品が家庭に普及し始め、その10年後の1970年には、普及率は冷蔵庫89.1%、洗濯機91.4%に達しました。ここに更にやっかいな化学製品が登場してきました。プラスチックです。このプラスチックの日本国内消費量が、1960年54.5万トンと国民1人当り5.83?(キログラム)でしたが、70年に39.33?、1990年には92.43?と、10年ごとに倍増以上の勢いで増え続けたのです。
現在のごみ問題は70年代に入って顕在化するのですが、それは1960年前後からすさまじい勢いで各家庭に普及した耐久消費財が、10年前後を経て、同じくすさまじい勢いでごみとして排出されたからです。それとともに、プラスチックやラップなどがごみとして出されるようになりましたが、それらの焼却処理に伴って発生する有毒のダイァ…シンが土壌や水を汚染する事態が広がりました。厚生省も1997年、全国で52カ所のごみ焼却施設で、基準を大幅に超えるダイァ…シンが発生しており、緊急対策を講じる必要があるとの報告書を発表しました。そんなことあって、ごみは増える一方なのに、地方自治体が家庭ごみなど一般廃棄物のごみ処理場を建設しようにも、住民の同意が得られず、建設できないケースが増えてきたのです。
90年代に入ると、産業廃棄物の問題が大きく登場しました。日本は海外から石油など年間約7億トンの原料を輸入し、それを製造加工して、自動車、家電などの製品として約7000万トンを輸出しています。その差が生産過程で排出される気体や液体、固形廃棄物なのですが、この固形部分が広義の産業廃棄物です。その年間排出量は1994年度で4億0545万トンですが、日本の沿岸部にはほとんど埋立ての余地はなく、ごみ処理代も急騰しているため、こうした産業廃棄物の平野部の砂利穴や、山間部の谷間への埋立てが急増し、不法投棄もめだって増えているのです。
一体どうしてこんな事態になったのでしょうか。今日でこそ、「持続可能な開発」「資源循環型(リサイクル)社会」が環境保全の基本的な考え方として認められていますが、一昔前までは、あたかも「大量消費こそ豊かさであり、幸せである。」と言わんばかりの商品宣伝が行われていました。高度成長は大量生産?大量消費の経済を招き、「節約は美徳」としてきた日本社会を「使い捨て」社会へと変えてしまいました。
「豊かな消費生活=幸せ」とする現代の物神崇拝が生んだごみ問題、そのごみ処理に3兆円も使うぐらいなら、どうしてごみの出ない経済や社会の仕組みを作ろうとしないのでしょうか。地球環境問題もまた、人類の生産活動や消費活動が排出したごみが生み落としたものに他ならないのですから。
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新しい文型
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~とは
~ごとに
~一方だ
~う-にも~られない
~と言わんばかり
~に他ならない