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日本むかしばなし集92
日期:2020-01-19 22:28  点击:297
塩ザケを池へはなす話

むかし、お寺のお坊さんは、なまぐさいものは、いっさい食べないことになっていました。肉や魚は、生きものをころして、その肉を食べるのだから、悪いということになっていたのです。ところが、ある寺の和尚さんが、冬の寒い日に、だん家へ行って、
「年をとったので、こう寒いと、寒さがいっそう身にこたえます。」
そういいました。すると、これを聞いただん家の人が、
「それは和尚さん、塩ザケを食べられるとよろしいですよ。うまいうえに、それこそ、腹《はら》の底からあたたまってきます。」
そう教えてくれました。和尚さんは、そこで、塩ザケが食べたくてならなくなりました。しかし、塩ザケだって、魚です。なまぐさい魚です。お坊さんが食べるものではありません。どうしようかと考えましたが、こんなときは、小僧を使いに出すがいいと、思いつきました。そこで、
「小僧、小僧。」
と、小僧さんをよび、いいつけました。
「寒くて気のどくだが、町へ行って、塩ザケを一ぴき買ってきてくれないか。くすりにするのだからね。」
小僧さんはこれを聞くと、心の中では、
「和尚さん、うまいことをいってる。くすりもないものだ。」
そう思いましたが、それでも、
「はい、はい。」
と、出かけていきました。買って、お寺へ帰ってみると、和尚さんのところへ、だれかお客さまが来ています。
「お客さまの前へ、この塩ザケを持っていったら、和尚さん、さぞ困《こま》るだろう。」
と、そう、小僧さんは思いました。しかし、いたずら坊主の小僧さんは、
「そこがおもしろいところだ。ひとつ、和尚さんを困らせてやろう。」
と、さっそく、座敷《ざしき》へ出かけました。そして、
「和尚さん、おくすりを買ってまいりました。」
そういって、塩ザケを、和尚さんとお客さんの前へ出しました。和尚さんは弱りました。
そこで、なんといったらいいかと考えましたが、とっさのばあい、いいことばが出ません。そこで、
「なんだ。おくすりといって、そりゃ、魚じゃないか。魚なら、山の池へはなしてやりなさい。」
そういいました。
山の池へはなしたら、塩ザケが生きて泳ぐでしょうか。考えてみてください。

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