華道とは、四季折々の樹枝・草花などを切って花器に挿し、その姿の美しさ、いのちの尊さを表現し観賞する芸術です。茶道などの他の諸芸と同様、礼儀作法を大切にする日本の伝統的な芸術です。華道は6世紀に仏教の僧が仏前に花を捧げたのがその起源で、16世紀ごろから盛んになったと言われています。現在華道の流派は、華道家元である池坊を中心に全国に2000~3000程あると言われています。自然の花を使って天、地、人の3要素をバランスよく表現するという考え方が基本です。
A:近所に花屋さんができたから、お花を買ってきて、久々に生けようと思っています。
B:すごいですね。華道ができるなんて。私はパーティー会場などで見たことしかありません。
A:高校の時は華道部でしたから、少しだけ覚えました。日本の生け花では、色鮮やかな花だけでなく、枝ぶりや木の幹の美しい表情、葉や苔まで、自然植物すべてを総じて「花」と呼び鑑賞します。そして、はさみで長短をつけたり、葉の形を修正したり、手で反りを加えたりして、自然の美や心情を表現するのです。
B:そうですか。ところで、なぜ生きている木や花をわざわざ切って生け花にするのですか。
A:自然に咲いている花もとても美しいもので、生きている命の輝きを感じます。ですが、生け花は、そこから命をいったん断ち切って、人の美意識や考え方というフィルターを通して、自然ではあり得ない美を構築していくことだと思っています。だからこそ、生け花をすることは、非情に責任の重いことと思います。自然のまま切らない方がきれいだった、となってはいけません。自然では感じなかった生命感を強調して表に引き出さないと、花の命を断ち切って、生け花をしている意味がなくなります。
B:なるほど。納得しました。
A:また、生け花にはいろんな約束事があります。例えば、生けた総本数は奇数です。木は後ろ、草は手前に行けます。
B:しかし、規則を守らなくてはいけないと思うと、堅苦しくつまらなくならないんですか。
A:規則は気まぐれ ではなく、理由があってできているのですよ。奇数は割り切れなく、バランスもとりにくいです。昔の人は逆に「これから伸びていく、将来性のある形」ととらえました。つまり、奇数にすることで植物の命が成長していく様を託したわけです。また、木は何年もかかって成長し、寿命が長く、過去や古いものを表しています。草は1年で生まれてかれていき、現在や新しいものを表しています。つまり、木は遠さ、草は近さも表します。木と草を生けることで、古今遠近が一つの形として現れてきます。
B:ふーん。いろいろ奥深いですね。勉強になりました......