八一 栃内の字野崎に前川万吉といふ人あり。二、三年前に三十余にて亡くなりたり。この人も死ぬる二、三年前に夜遊びに出でて帰りしに、門《かど》の口より廻り縁に沿ひてその角まで来たるとき、六月の月夜のことなり、何心なく雲壁を見ればひたとこれに付きて寝たる男あり。色の蒼ざめたる顔なりき。大いに驚きて病みたりしがこれも何の前兆にてもあらざりき。田尻氏の息子丸吉この人と懇親にてこれを聞きたり。
遠野物語81
日期:2019-08-25 10:44 点击:317






