眼鏡(4)
日期:2022-08-08 23:57 点击:255
こういって、
止めたものがあります。みんなが、びっくりして
見ると、
髪を
長くして、
赤いネクタイをした、
図画の
先生でありました。
先生は
小使い
室へ
用事があるので、
教員室を
出て、ちょうど
通りかかったのでした。
「
先生、こんなすずめの
巣をお
教室へ
持って
入るのです。」と、六
年の
山本が、
告げました。
「
先生、
教室で
遊んでいたのでないのです。
帰りに
持って
帰ろうと
置きにきたのです。」と、
小田が、
弁解しました。
図画の
先生は、
両方の
言い
分をきいていられたが、
「そんなものを、
教室へ
持って
入っては、いけないな。」と、おっしゃいました。六
年生は、それ
見ろといわぬばかりの
顔つきをしました。
「
先生、
僕たちの
拾ったすずめを、だまって
持っていこうとするから、いけないのです。」と、
青木が、六
年生の
行為を
非難しました。
先生はこうなると六
年生をいいとはいえませんでした。しばらく、
先生は
黙っていられると、六
年の
山本が、
「
吉村先生にあげて、
理科の
時間に、
解剖していただこうと
思ったのです。」と、
答えました。
「
解剖!」と、
若い
図画の
先生の
目は
光って、
山本の
顔を
見られました。
「そうです。
僕たち、このごろ、いろいろのものを
解剖して、
習っているのです。
吉村先生は、へびでも、
小鳥でも、
捕らえたら
持ってこいとおっしゃったのです。」と、すずめを
持っている
小西が、いいました。
正吉は、このとき、いい
知れぬ
腹立たしさがこみ
上げてきました。
「
僕たち
屋根からおっこちたすずめを
助けてやろうと
思っているのに
殺すなんて、そんなことできません。
解剖したかったら、
自分で
取ってくればいいのです。」
正吉は、こういいました。しず
子さんが、
美しい
貝をあげた
先生は、この
先生だと
思うと
自分のいったことをわかってくださるにちがいないと
思いました。
図画の
先生は、
目をぱちぱちさして、どちらにも
理屈があるので、
判断に
苦しむといったようすでしたが、
窓ぎわへきて、
子を
案じて
鳴いている
親すずめの
鳴き
声が
耳に
入ると、
急に
先生の
顔色が
明るくなりました。
「
君たちのいうことは、よくわかった。一
方は、
理科の
知識を
得るためだというのだし、一
方はかわいそうだから
助けるというのだ。どちらも
悪いとはいわれないが、いちばんいいのは、この
子すずめを
親すずめに
返してやるんだね。」と、
先生はおっしゃいました。
「ああ、それがいいのだ。」と、
正吉は、
思いました。
「
先生、あの
高い
屋根へどうして
上がれますか!」
小田が、
先生の
言葉の
終わるのを
待って、
問いました。
「あすこへは
上がれませんね。しかたがないから、
物置の
軒下へでも
小使いさんに
頼んで
入れてもらうのだ。そうすれば、
親すずめがきて、
世話をするでしょう。」と、
先生は、おっしゃいました。
「やはり、それがいい。」と、
青木も、
小田も、
賛成しました。六
年生の
二人は、
反対しなかったが、だまっていました。
「それでいいなら、
私が、
小使いさんに
頼んであげるから。」
「
先生、お
願いいたします。」と、四
年生の三
人は、
声をそろえて
叫びました。
図画の
先生は、すずめの
巣を
大事そうに
持って、はいっている
子すずめを
慰わるようにして、あちらへいってしまわれました。
これで、とにかく、ひとまず
事件が
終わってしまったので、六
年生の
二人も、あちらへ
去ろうとしました。すると、
突然、
青木が、
「
君、
僕の
眼鏡をわったね。」と、
青い
顔をして、六
年の
小西を
呼びとめました。みんなは、
驚いて、その
方を
見ました。
「
僕が、
君の
眼鏡をわったって!」
小西は、
青木の
差し
出した
眼鏡を
見つめました。なるほど、
片方の
玉に
白いひびが
入っています。
「
君のひじが
当って、
眼鏡が
飛んだんだよ。」と、
青木が、
説明しました。そういわれると、
小西も、「ああ、あのときか。」と、
思ったのでありましょう。じっと
眼鏡を
見ていましたが、
「
知らんでしたのだから、かんにんしてね。」と、
素直に、わびました。
こうわびられると、かえって、
青木が
返事に
窮してしまいました。それは、なぜでしょう? みんなの
視線が
彼の
顔を
見守ると、さもいいにくそうにして、
「
僕は、いいけれど、お
母さんが……。」と、いいよどみました。
「しかられるの。」と、
小西が、きき
返しました。
青木は、うなずきました。
青木の
家は、
荒物屋で、
父親はとうになくなって、
母親と
二人でさびしく
暮らしているのです。その
家のことをよく
知っている、
正吉や、
小田には、むしろ、
青木の
立場に
同情されたのであります。そして、すずめの
巣よりも、このほうが、
問題に
思われました。
「お
家へいって、あやまればいいだろう。」と、
正吉がいいました。
「
家へいって、あやまらなくても、
半分弁償すればいいだろう。」と
山本は、
小西に
味方して、いいました。
しばらく、だまって
考えていた
小西は、
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